今さらというか、ひょんなことからというか、突然『東京タラレバ娘』にハマってしまい、全5巻、一気買いして一気読みしてしまいました。これおもろいっす。もう『Kiss』毎月読みたいレベル。ハマりました。
まあ、内容は「あのときこうしていタラ」、「もしこんなことやっていレバ」と言って、結婚していない自分を嘆く三十路過ぎのアラサー女性のストーリー。恋愛マンガでありつつ、人生マンガでありつつ、仕事マンガでもある、すごい作品。
もうちょっと細かく説明したいけれど、今回はそれがメインではないので、そのへんは作者のインタビュー記事をご覧くだされば。ってか、ぜひ買って読んでみてはいかがでしょう。第1巻は、いま216円。安い!!

んで、このマンガがむちゃくちゃ面白くて、ネットでちょこちょこと調べていたところ、NHKの漫勉にも作者の東村アキコさんが登場していたらしく、浦沢直樹との対談の抜粋が載ってました。

ちょっと長いけれど、引用しますね。
浦沢 デビューして三十何年になりますけど、ずっと締め切りのない日はない。
東村 何かしらやっている。
浦沢 何かしらやっているから、ずっと締め切りのある人生。もし締め切りがなくなったら「どうしよう」って、途方に暮れるよね。デビュー以来、いついつまでに何を仕上げるっていう生活しか経験してないので、ちょっと想像つかないよね。
東村 いっぱい描いていると、すごいって思ってくださる人もいて。「すごいですよね」「えらいですよね」って言われるんだけど、締め切りがありゃあ描くと。それだけの話で、それって全然大したことじゃないと思っているんですよね。描かない自信しかないですね、一年締め切りなかったら。子どもとハワイ行っちゃいます、マジで。
浦沢 一年締め切りがなかったら、復帰できる自信ある?
東村 ない。無理。先生あります?
浦沢 無理。
東村 私、たぶん、もう二度と描かない。
浦沢 もう二度と描けないと思う。
東村 遊びほうけて。絶対戻せない。
浦沢 戻せないね。
これを読んで、「そういうことか!」と。
「締切感覚をもつ」ということ。

この対談は、両先生の仕事について言及している内容だけれど、『東京タラレバ娘』もつまりは同じ、「締切への意識」というテーマで描かれているわけです。
あの人と付き合っていたら、あのプロポーズを受けていれば、もっと痩せたら、あのとき我慢できていれば……。三十路半ばを前にして、もはや「締切待ったナシ!! これ以上の先延ばしは危険!」という状態になって焦り奮闘する主人公たちを描きながら、「あなたはどんな締切を持ってます?」と、「それに対してどう動いてる?」と投げかけ続けるところに、このマンガの魅力が凝縮されてるんじゃないか、と。

「締切はまだまだ先」という感覚だと、「もっともっと」を求めちゃう。だって、締切がギリギリになればなるほど、できることは少なくなるし、クオリティも下がる可能性がある。でも締切を延ばし延ばしにしたり、そもそも締切を設定しなければ、ずっと期待し続けられる。
マンガ家はそんな「締切」をいくつも持っていて、それに向けて動いているから、ぼくらは面白いマンガが読める。それは多かれ少なかれ社会人にも共通することで、社会人になると上司やお客さんから求められる締切に向けて動きます。

そういう意味で、締切を乗り越えた数は、尺度のひとつかもしれません。

んで。
自分は何に締切を設定するのか。
どこに締切を設定するのか。
それがあるのとないのでは、人生の「張り場」が変わるよね、と。

そんな「締切感覚」。
人間なら誰にでも絶対やってくる「死」という締切までに、どんな締切を設定して、どれだけそれを越えていくのか、それって大事なことだなぁと気づかせてくれるマンガ『東京タラレバ娘』、すごいっす。

さ、自分がいま、抱えている「締切」って何でしょう?