ここ3日間で日経ビジネスオンラインで連載されていたこの特集。

プレステ生みの親・丸山茂雄が語る迷走の裏側
 
むちゃくちゃ面白く、興味深く、勉強になりました。
かつては世界を席巻して、地球を代表するブランドとして世界中の人たちをワクワクさせてくれたソニーという会社が、なんで今のような状態になってしまったのか。最盛期のソニーの風土や考え方、ソニーという会社のコアコンピタンス、企業という集団の構造が詰まった、超良記事です。

いくつか言葉を抜き出すだけで、名言集ができちゃう。
会社創業時の人材に必要な資質は「頭の良さ1割、度胸9割」だよ。でも会社が成長していくに従って、人材の質が変化して「頭の良さ9割、度胸1割」の社員が増えてくる。
大賀さんは「鼻が効かないやつはダメだ」ってよく言っていたんだよ。
「ソニー社長」というポジションを楽しんでいた人たちが、もう20年以上トップを務めているわけだから、そりゃあどんな立派な会社も終わるよね。
同じ事業のままでいつまでもやっていけないよ。そういうことを理解しない若いやつが多いから、新卒の時にピークを迎えている会社に入りたがるんだ。
新しいビジョン持つ人なら、そんな窮屈な大企業病の会社から飛び出して、別の会社を作って自分でやるだろうし。(中略)すると残った人たちは保守的な官僚ばかりになるから、ますます変化はできなくなる。
ソニーは自分たちが何の会社なのか理解する力や、それを突き詰める力が足りなくて、元々持っていたいい部分を伸ばせなくなった。
田舎のハイカラなボンボンが、子供の頃に好きだった映画や音楽の会社を次から次へと手に入れたというのが、これまでのソニーの歴史ってことなんじゃないか。
でですね。
こういう人、少なくなったなぁ、と思うわけです。
歯に衣着せぬ物言いで、若い人たちに大人の格好良さを感じさせてくれるような大人。

江戸っ子気質? 大阪の商人魂? ガハハ系のきっぷの良さ?
なんというか「あのおっちゃんが言うならしゃあないか」と思わせるような、湧き上がるエネルギー?
それでいて経験や教養に裏付けられた、的を射た指摘の鋭さ。

ぼくはけっこう昔から、そういう大人のおっちゃんに憧れてきたフシがあって、それこそ城山三郎が描くような昭和を支えた人たちの小説を読んだりもしたし、心の師匠開高健だってガハハ系でありながら、緻密で叙情的かつ博覧強記の言葉を巧みに使う人。
加藤鷹が心酔するAV監督の代々木忠も、いまはやさしさや人情系に見えて実はもともとはヤクザだし、伊丹十三も映画はもちろんだけれど、エッセイなんかでも教養と視点の鋭さに基づいた、実に格好良い言葉を吐くわけです。あと、白洲次郎は言うまでもなく。

そんな大人に憧れて、そんな大人になりたくて、勉強をしたり、経験を積んだりする。
かといって、この歳になってもまだぜんぜんそんな大人になれていないわけですが(笑)

「いまが楽しい」ことは、すごく大事なことです。
でもね、やっぱりいつもちょっとずつ「背伸び」をする意識も大事。
それがあると、人生の妙味というかそういうものが変わってくると思うんです。
んで、これらの人に共通するものってなんだろうと考えたときに、広さと細やかさと信念かな、と。

「広さ」っていうのは、大局を見る眼だったり、度量の広さ。
「細やかさ」っていうのは、察知したり感じたりする情状的な部分と、技術的なこだわり。
「信念」は、自分の生きる方針でありつつ、同調的にならないスタンス。

丸山さん然り、城山三郎や開高健、代々木忠や伊丹十三も然り。
格好良い昭和のおっちゃんたちを目指す上で、そういうところを見習い、盗みとって、真似し続ければ、ぼくも数十年後くらいにはそうなれるかなぁ、なれたらいいなと思いつつ、きょうも背伸びをしながら生きていきます。


ちなみに記事に出てくる大賀さん。
彼もまた本当にすごい経営者で、この本にはそんな大賀さんの魅力がたっぷり詰まってます。
中学生向けに書かれた本なので、とても読みやすいのに、大事なことが凝縮されてる。
就活中の学生にも、学びになることがたくさん書かれているので、読んでみてはいかがでしょう。