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この間、猿基地卒業生の川村くんと話していて、「そういえば前職では、“情報の価値化”ってよく言ってたな~」ってことを思い出した。
求人広告のライターの部下にも、案件をとってきてくれる後輩の営業にも、原稿チェックのときも案件ミーティングのときも、口ぐせと思われるくらいにい~っつも言ってました。

求人広告の仕事って、そりゃあらゆる業界や規模の会社とかかわります。いつも人気企業の案件を担当するわけじゃないし、むしろいわゆる不人気と言われる会社のほうが採用困難で案件数としては多くなります。
もちろん人気企業のほうが普通にやっても応募者は多くなるし、そうじゃない会社は応募者そのものが集まりにくい。

そもそも求人広告の仕事は企業と求職者のマッチングなわけで、企業がほしい人が集まらないと意味がないし、逆に求職者が「ちゃんと働けそう」だと感じてもらえないと意味がない。なんなら、その「マッチング」が成立するなら、1人応募の1人採用でもおっけーどころか、それこそが理想の採用だよね、と。

なので、それを実現するには、情報の価値化が大事やで、と。
それはそれは、何度も何度も口を酸っぱく、耳にタコができるくらいに言い続けてたんです。

で。
なんでこんな話を書き始めたかというと、学生から送られてくる自己PRがことごとくおもしろくないからです。

自己PRでも求人広告でも、それを書く目的はあくまでも相手に「お!? 良さそうやん?」と思わせることにあって、自分の想いや考えを投げつけることではないはずなんです。
それを伝えることで、相手に何かしらの価値を感じてもらうこと、感じさせること。そのために発信するわけやん? なのに、自分の言葉を投げつけて、判断を相手に任せすぎちゃうと、伝えたいことも伝わらないよね、と。受け手まかせになっちゃうよ、と。

そういう意味で、ぼくは「情報の価値化」と言っていたし、前職ではもうちょっと厳しめに「それは誰の役に立つの?」、「それってこっちの価値観だよね?」とか言ってました。

たとえば、さっき書いたように、求人広告では人気企業は普通に書いても応募者は来ます。でも、企業側からすれば「来るのはわかってるから、ホントにほしい人だけが応募してきてほしい」と思ってる。
一方で、いわゆる不人気といわれる会社の場合は、「まずはとにかく応募者を増やしたい」という期待があったりするのだけれど、基本的にぼくらとしてはやることは同じで、

「伝えたい相手に 伝わる言葉を 伝える」ことなんです。
そのために考えて、言葉を書く。

情報って、ただの情報です。
あくまでも無機質なもので、人によって捉え方は千差万別いろとりどり千態万状各人各様、多種多様で人生いろいろ。

その「情報」は誰にとってのどういう価値になるのか、を意識して発信したほうがたぶんヒット率は上がります。逆に言えば、自分が「これおもろいやろ~!」って投げてみたからといって、自分と同じようにおもしろがってくれる人は意外と多くないもんです。もしくは薄~いところでの共感しか生まれない。

だから、求人広告では、人気企業の場合はあえて厳しい部分をちゃんと書いて、そこにしっかり共感できる人に伝えたい(RJPと言います)。あまり人気のない企業の場合でも、そこで楽しく働いている人はいるのだから、そこにフォーカスしてそれをおもしろがってくれそうな人に「こういう魅力もあるんやで」と伝えたい。
どちらも、あくまでも「相手にとっての価値」を考えてるわけです。


就活における自己PRも同じです。
いわゆる自己分析とかをして、自分なりに納得のいく言葉を見つけること。それはそれはむちゃ大事。自分がすっきりできて、「これだ!」と思える言葉に辿りつけたら、そりゃもちろん良い方向。

ただ、そこまでできたからこそ、もういっちょ考えてみてほしいんです。

「その言葉、相手はどう捉えるかな?」
「知らない人から、それを言われたらどう感じる?」
「それは相手にとって、どんな価値になりえそう?」

いや、これはホントぼく自身のせいもあって、セミナーやら猿基地に来てくれた学生たちに過去の卒業生の自己PRを見せているので、その完成形の印象が残りすぎてしまってそうなるのかな、とも思いつつ、とはいえあまりにも小手先の表現によりすぎてないかい? と感じちゃう。


別に就活にかぎった話じゃなく、日常生活でも仕事でも、自分が「これや!」って思えたときこそ、それを誰かに伝えたり広めたりしたいと思ったときこそ、「それは相手にとってどんな価値になりそかな?」って、考えてみるのも良いんじゃないかな、と。

営業では「エスキモーに冷蔵庫を売る」とか、マーケでは「ドリルを買う人が欲しいのは“穴”である」という有名な話があるし、名著『アイデアのちから』では「知の呪縛」で似たような話が書いてあります。

せっかく自分が納得できる言葉ができたなら、自分が伝えたいことがあるならば、あともういっちょ考えてみて、相手が受け取りやすいようにひと手間かけてみてはどうでしょか。プレゼントは、むき出しで渡すよりキレイに包装したほうが、ワクワク感が増えるわけで。