「人が喜んでくれる仕事がしたいです」
「誰かを笑顔にするために働きたい」
「お客さんの顔が見えて、直接役に立てるような仕事」
「相手の役に立ってると感じられる仕事」

っていうことを、学生が言っていたりするのだけれど、ぼくにはどうにもよくわからなくて歯がゆい感じがするんです。いやもちろん、意味がわからないとか、その気持ちがわからないということではなくて、「それじゃ何も決まってないのと一緒でしょ」と、そう感じちゃうんです。

なので、「たとえば、他にはどんな要素があったらいいの?」と聞いてみると、

「ちゃんとスキルで差別化できる仕事」
「自分を必要としてくれるお客さんがいるような状態に」
「会社の名前じゃなくて、自分の名前で信用されたい」
「働いた分、ちゃんとお金で返ってくる仕事」

という答えが返ってきたりするわけです。
でも、それでもやっぱり掴めない……。
だからそういうときは、ちょっといじわるなことを考えちゃう。


「じゃあ、風俗嬢でいいじゃん」


人が喜んでくれるし、笑顔になるし、直接顔も見えるし、役にも立てる。スキルで差別化もできるし、必要とされて、自分のことを指名してくれる。働けば働くほど、歩合でお金も入ってきます。

ほら、風俗嬢がぴったり!
すべての要素が詰まってる!!
さあ、いまから風俗嬢に!!!!


って、あーいじわる。



でもね、そういうことから考えてみてもいいと思うんです。
いや、別に風俗嬢も選択肢に入れてみたらどうですか? という話ではなくて。

自分がいま考えている「やりたい仕事」って、風俗嬢と何が違うんだろう?
自分が考えている「スキル」って、風俗嬢の「スキル」とはどんな違いがあるの?
風俗嬢の何がイヤで、それって自分が何を求めているからなの?
むしろいま自分が風俗嬢になったとしたら、何をどうがんばれる可能性があるんだろう?
ちょっと極端な、でもほしい要素は入ってる風俗の仕事と、自分がぼんやりと描いている仕事は、何が同じで何が違うんだろう。じゃあ、そのズレを埋めるものはなんだろう?

そういうことを考えてみると、「ぼんやり」としたイメージももうちょっと具体的になるんじゃないかと思うんです。


という話をしつつその一方で「風俗嬢もバカにできないよ?」とも思うんです。
脊髄反射的に、単なる感覚的に「風俗嬢はヤダ」みたいなことを言う人も多いけれど、あの世界だってしっかりプロフェッショナルな世界です。

プロのAV女優やAV男優の人たちって、ホンマモンのプロフェッショナルです。そのへんのビジネスマンと比べても、本気度もプロ意識も努力や自己節制のレベルもまったく遜色ないどころか、学ぶところだらけ。
森下くるみや紗倉まな、代々木忠や加藤鷹はもちろん、若手のしみけんとかもそう。
「仕事」や「働きかた」を考える上でも、たくさんのヒントや刺激が詰まった世界。本もいろいろ出ています。


この人はホントにプロ中のプロ。
だからこそ、AV女優という仕事を「天職」と言い切る意識の高さに脱帽です。


秋田から上京して一世を風靡した森下くるみさん。
紗倉まなとは逆に、最初はふんわりと女優になったけれど、そこからの変化・進化が驚異的。

AV男優の流儀 (扶桑社新書)
鈴木 おさむ
扶桑社
2014-12-23

AV男優5人と鈴木おさむの対談集。
「仕事としての男優」ということを考える上でもいろんなタイプの人たちがいます。


その5人のうちの一人のしみけんさん。
仕事論としても、業界のウラ側本としてもおもしろいです。


それこそ「人に向き合う」ことにかけては、この人。
加藤鷹も心酔するAV界の巨匠中の巨匠。「そこまで考えるか?」ってほどに真摯。


あまり「AVなんて」と思わず、いろいろ読んでみるのもいいですよ♪