(3924字/6.5分/★★☆)
学生と話をしていて、「会社をどう選んでいいかわからない」という話題になることがちょいちょいあります。これだけ情報があって、大手はどうなるかわからないし、じゃあ中小ベンチャーかっていったら、それはあまりにも会社が多すぎて、そもそも学生として社会や会社の経験はおろか、知識さえほとんどないわけです。そりゃわからなくなります。うん、とってもわかる。わかります。
んで、考えてみたんです。
もし、今ぼくが学生だとして、就活をすることになったとしたら、どんな就活するだろう……?

普段、就活の方法論については考えているものの、実際の就活をするとなったらどう動くか、なんてことはあんまり考えたことがなかったので、ちょっと真剣に(とは言っても20分くらい)考えてみました。
とはいっても、ニュースサイトでよくある「自分がいま学生だったら、どの会社に入るか」みたいな話ではないです。特定の企業を挙げたとしても、会社の選び方やその基準は人それぞれなので、あんまり役に立たない。
それよりも、「ある程度かぎられた期間で、自分に合っている可能性が高い会社を探す/選ぶには、どう考えて動いたらいいかな?」ということについて、ちょっと書いてみます。


まずですね。
ぼくが大学生で、就活を考えはじめたとしたら、とりあえず本屋さん。
本屋さんじゃなくても、Amazonを覗くのもいいかもしれません。
とりあえず、本を見る。

本を、見る。
そうです。本を「読む」んじゃなくて、とりあえず本を「見る」

そりゃもちろん、本を読むのに慣れていて、自分に必要な本を自分で判断できるなら、どんどん読んだほうがいいと思います。月50冊くらい、平気で読めるなら読んだほうがいいです。そりゃ絶対的に。
でも、たぶん学生が社会や仕事を考える上で、今の自分にはどの本が必要で、そこから何を学ぶために、どんな本を選んで読むべきか、ってことはたぶん的確な判断ができない。だから迷っちゃう。

そういう前提で考えると、まずは本を「見る」んです。

世の社会人が何を気にしてるのか、を知る。それが目的。
それこそ学生は、社会や仕事のことなんて、ぜんぜんわかりません。
業界本やら新聞やらどんなに「知識」に触れたとしても、その知識や情報の捉え方すらわからない。どう役に立てればいいのかもわからないんです。

だから、そういう知識や情報は、いらない。
それよりも、いま実際に働いている人たちが、何に興味をもっていて、何を知りたいと思っているのかをわかっておきたいな、と。どういうジャンルの本が売れていて、何に注目しているのかを知るために、とりあえず本屋さんなりAmazonなりで、ビジネス書のランキングをみたり、目次や著者のプロフィールを眺めたりして、なんとな~くでいいので、社会人の視点や感覚を感じてみたい。
Amazonだったら無料サンプルをがんがんダウンロードして、わしゃわしゃ眺めてみる。とりあえず30~50冊くらいをさら~っと見てみて、ぼんやりと「社会人」が気にしていることの輪郭をつくる。


そんな、ぼんや~り感覚で「いまの社会人の視点」がわかったら、次はできるだけ具体的な仕事のサンプルを知りたくなります。
つまり「“仕事”って、どんな感じで進むのん?」を知りたい。

だって、仕事のことなんてぜんぜんわからない。
SEと言われる人たちはパソコンでプログラムを書く以外に何をしてるのか、要件定義書ってどんなものなのか、誰とどんな会話をしてるのかなんて、想像ができない。身近であるはずのスーパーの社員さんたちだって、何をどれくらいのスパンで考えて、何に頭を悩ませて、どんな1日を送っているのか。営業という仕事だって、イメージだけで、法人・リテール・新規・ルート……って、よく知らないんです。

だから、それなりに具体的に、仕事がどう進んでいくのかを知りたい。
OB訪問や説明会での「1日のスケジュール」みたいなのじゃなくて、『13歳のハローワーク』とか『職業図鑑』でもなくて、もっとリアルな「仕事」をイメージできるようになっておきたい。
もっと具体を知っておきたい。

ので、ぼくが学生だったら、とりあえず本を読む、ネットを漁る、ドキュメンタリー映像を見ていくと思います。
昔のものではあるけれどNHKの『プロジェクトX』(プロフェッショナル 仕事の流儀の前にやってたやつ)をアマゾン・プライムで見たり、城山三郎や高杉良の小説を読んだり、それこそ『ゴール』や『ファシリテーター』、もっと言えば三枝匡の『戦略プロフェッショナル』とか『V字回復の経営』とかでもいいです。むずかしそうに感じたら、『情熱大陸』や『カンブリア宮殿』からでもいい。そういうリアルな仕事のドキュメントを知る。



そうすれば、単純な企画・広報・営業……みたいな漠然としたイメージじゃなくなります。
「仕事ってこんな感じで、こんなことに気をつけて、こんな時間感覚で、ここに気をつけながら進めていくのか~」ってことが、ちょっとは見えてくると思うんです。仕事へのリアル感が増える。

まず、この「本を見る」→「具体を知る」をやってみる。

あとは、リクナビとかマイナビとかじゃなくて、ネットでおもろい企業を探します。
別に「就活のため」という感覚じゃなくて、いま、リアルに、世の中で注目されている企業や最先端で何が起きているのか、を知る。新卒採用をやってるかどうかは関係なく、NewsPicksやら日経電子版やら、ハフポや東洋経済、ダイヤモンド・オンラインをざざっとスキャンするくらいの感覚で、いろ~んな企業や働き方を見てみたい。
なんなら、帝国データバンクの「倒産情報」とかを見るのも興味深いです。どんな会社がどんな感じになってしまってるのかを知るのも、大事な情報。

「業界や職種を研究」するのとは、ちょっと違う。
この業界はどんな企業がどんな構成になっていて、どの企業はどうだとか、特定の職種についてむちゃくちゃ「研究」するんじゃなくて、もっと広く、もっとリアルに、広い感覚値を磨く。宮本武蔵の『五輪書』に書いてあるようなイメージ。


そこまでやってみたら、それなりに「社会人の感覚と日常」が見えてきそう。
本当に「リアルの社会人」に会う土台ができるような気がします。
「福利厚生を教えてください」とか「仕事のやりがいは何ですか?」とか「御社の強みは何ですか?」なんて雑な質問をするのがバカらしくなるはずです。
ここまでやったら、酒場に行くなり、OB訪問をするなり、TinderやMatcherで出会うなりして、リアルな社会人のリアルな仕事について、質問できる自分になってる。


長々と書いてしまいましたが、ぼくが「いま就活するなら」何をするかを、ひと言で表現すると、
仕事観のコレクション
です。
んで、社会や仕事についての理解の解像度を上げてみよう、と。そういう話です。


最初に書け、とも考えたのだけれど、このブログの読者はちゃんと読んでくれると信じて……(笑)

でも、そういうことなんです。
学生が、「いざ就活」になって何に迷うかというと、サンプルが少ない(どころか、ない)からなんです。ミシュランの高級店とかに行って、「アングレーズソース」とか「オッソブーコ」とか「ガランティーヌ」って言われても、想像すらできないのと同じ。
もちろん、あらゆる業界のあらゆる職種のあらゆる仕事の進め方や社風を踏まえたワークスタイルなんてわかるわけがありません。

単純に言ってしまえば、「仕事観のサンプルが少ない」ことこそが、迷いの根源。
なのに、就職サイトや新卒向けページをどれだけ見ても、そういう情報は載ってない。

それこそ学生が「サークルの運営」、「関係者との折衝」、「バイトのマネジメント」とか言っても、よくわからないし人それぞれですよね。それと同じです。
別に「多方面にわたって“業界研究”をしましょう」なんて話じゃないです。
社会やビジネスを、いろんな方面、いろんなフェーズ、いろんな角度から雑多に見てみて、「お!? これはおもしろそうかも???」と思えるアンテナを増やせればそれでいいんです。その中で、仕事や社会に対する解像度を上げられたらいいんです。


ぼくが今、学生だったら、とりあえずこんな動きをすると思います。
んで、おもしろそうな仕事や会社を見つけたら、とりあえず学生の立場を利用して、新卒採用をしていようがなかろうが、連絡してみる。そして質問攻めにしてみる。なんなら、その人たちが「おもろい」と感じている仕事や会社を教えてもらう。そこからの数珠つなぎ。

もちろん、ここまで書いた全部のプロセスで、「自分が活躍できそうな場所はどこかな~?」、「これから何が求められるようになるのかな~?」は意識し続けておきます。
合わないところは合わない。ただ、合うも何も、対象を知らないとど~しようもありません。1ピースだけじゃパズルはできない。けれど、他のピースに合わせる必要もない。自分と繋がって大きな絵が描けそうなところのほうがいい。


まあ、こういう話は年が明ける前に書いておいたほうがよかったかもな~、とは思うし、「いま、学生たちに伝えたら、逆に焦っちゃったりするかな」とは思う部分もないことはないのだけれど、書いてみました。
もちろん、ゆ~ても「これを全部やってみれ!」という話ではなくて、本質的には「仕事観のコレクション」だし、「仕事や社会の解像度」という話です。

就活をしていたら、いくらでも「社会人」に出会うはずです。
その人たちにはいくらでも質問できるはずだし、その質問の解像度が高ければ高いほど、企業の人たちもおもしろがってくれるはず。自分にとっても役に立つ。

そういう意味で、「ぼくが就活するならば」の妄想シミュレーションがお役に立てたら、と思います~。