就活がはじまると、魔法にかかっちゃう。
それまでは普通にリアルな現実をすごしていたはずなのに、「さあ、これから就活がはじまるよ」と言われたり、「これから面接だ」と面接室のドアを開けた瞬間だったり、「就活モード」に入った瞬間に、多くの人は魔法がかかって異世界に迷い込んじゃうのです。

その魔法にかかるとなんだか「就活っぽい振る舞い」をしようとしちゃう。
「ワタクシは!」
「試行錯誤を繰り返し!」
「お客さまの笑顔を!」

日本の若者から元気を奪って日本を転覆させようとしているどこかの組織が、異世界的なところから悪い魔術書的なものを見つけ出して、そういう結界的な何やらを張ったりして、就活生を貶めようとしてるんですよたぶん。そうじゃなきゃどうにも説明がつかない。


ぼくがかかわってきた学生の中にも、普段は社会人のおっさんおばちゃんと楽しく会話しているのに、「さ、ちょっと面接の練習でもしてみよか」と向き合った瞬間に「ワタクシは!」とか言う学生がいるんですもん。あれ、確実にそういう秘密結社的な悪の組織の罠ですって、絶対魔法。

たとえば、某大手広告代理店D社を1社だけ受けて、それで内定をとって、入社半年くらいでそこを辞めて、いまは某日替わり店長のお店の代表をしている人がいます。
学生時代からエネルギーの塊のような彼は、自己PRで「他の学生の100倍はタダ酒を飲んだ」と豪語するくらいに飲み屋に行くわ、おっさんおばちゃんと仲良くするわで、相手が誰でも普通に話す。ときには歳上だろうがタメ口で話すし、それでも可愛がられたりするような学生でした。

そんな彼でも、そうでした。
ぼくとしては「話す内容はしっかり練ってきたし、面接はいつも通りに話せば大丈夫」と思ってる。社会人との会話くらいのことは準備しなくても充分に慣れているし、学生時代の過ごし方だってちゃんとしてる。一緒に内容も練ってきたし、コンセプトだってしっかりしてる。なので、「ま、念のため、ね」程度のつもりの面接練習。ちょっとした確認程度。

それが、ですね。
話しはじめて5秒で「ストーーーップ!!」です。
タイム! タイム! ちょっとターイム! 普段のキミはどこに行っちゃったの? どんな偉い人とだって普通に話せちゃったりするキミはどこに隠したの? え!? 変身したの? 何かに憑依されたの?
ってくらいに、話し方が違う。
もう、「ボク、真面目デス!」みたいな感じで、いきなり優等生ぶったシューカツ生みたいな話し方になってて「違うやろ~!」と。恐るべし、闇の秘密結社の魔法の影響力……。

まさかの彼までそんな魔法にかかっちゃう。

他にも、一次面接から三次面接くらいまでは普通に話しているのに、いざ最終面接となったときに、緊張から魔法にかかっちゃうこともある。
ある学生は最終面接前にぼくに電話をかけてきてくれたんだけど、もうビルに入る前から声が違う。なんだかヨソ行きの声になってて、「違うやろ~?」と。サイバーエージェントの面接で、面接を担当するのがちょこちょこネットでも登場している、人事本部長の曽山さんだったんです。
そりゃ「人事のプロ中のプロ!」みたいな感じで取り上げられたりしてるから、緊張するのはわかります。でも、それでヨソ行きモードに入っちゃったら、いつもの自分は出しにくい。

なので、
「もう、会った瞬間に、“お会いできて光栄です~”くらい言っちゃおう」と。
空気に飲まれず、自分で空気をつくる。
それくらいしちゃって大丈夫。というよりも、それくらいの感じのほうがたぶん印象も良くなります。
んで、その学生は実際に「お会いできて光栄です~」でスタートさせて、結果的に内定とってました。


ぜんぶ「思い込み」です。
「就活はこういう話し方をするもの」という思い込み
キャリアセンターや先輩に刷り込まれる前ですら、面接の練習をしてみるとみんな同じように「ワタクシは!」になっちゃう。場合によっては、張り付いたような笑顔までおまけしちゃったりする。

もっと普通に、話しましょ?
面接室の扉は、別に異世界の入口じゃありません。
就活ゲームは、「ゲーム」と言っているけれど、あくまでも現実です。
面接って、「面接」と言われるけれど、あくまでも対話です。
もっと普通に、話しましょ?

変な魔法にかからないように。
そんで、そのためには普段から社会人と普通に話せるようになっておきましょう。
変なヨソ行きモードにならず、普段の自分でいきましょう。
もちろんその「普段の自分」をレベルアップしておくのは忘れずに~♪