基本的にぼくは「なんで今どき、マスコミに行きたいと思うんだろう?」という疑問があります。世の中的にも、経営的にも、マーケット的にも、テクノロジー的にも、「今さらマスコミちゃうやろ~」という話はいくらでも、あるにはあります。
とはいえ、マスコミ志望の学生たちは毎年それなりにいるわけで、彼らはもう妄信的に「マスコミに行きたい!」と思ってしまっているので、それはそれでまあ仕方ないか、とも思っています。

ただ、マスコミを志望するなら志望するで、こういう部分は考えてみてもいいんじゃないかな~、ということをちょっと書いてみます。

それこそ「マスコミ」というのは、マス・コミュニケーションの略です。
んで、「マスコミ志望」という人が言う「マスコミ」というのは、基本的にテレビ・ラジオ・新聞・出版の4大メディアを前提としていると思います。
「マス」というのは、「大衆」のことですね。
つまり、マスコミというのは「大衆とのコミュニケーション」なわけです。

というのを踏まえて、ちょっと考えてほしいのが、
「今の時代の“マス”って、なんだろね?」
と。
マスコミが向き合っている「マス」って、どこにあるの? 何が「マス」で、そこに向かってどんな情報を発信して、誰をどうしたいのだろう? と。

昔はたしかに「マス」があったと思います。
子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが力道山のファイトに熱狂し、「巨人大鵬卵焼き」なんて野球や相撲に一喜一憂して、年末は家族一同が揃って同じ時間に紅白歌合戦を観る。
ロッキード事件やリクルート事件といった政治の問題があれば、日本全国でみんなが注目したし、バブルの時代にはみんながボジョレーだジュリアナだといって、それなりにみんなが同じ情報に注目をしていました。

そりゃあもちろん、テレビや新聞、ラジオや出版は「マスコミ」として求められていたでしょう。

じゃあ、今。
この現代において、そういう「マス」が求めてる情報って、何があるんだろう。

たとえば、貴乃花がどうこうとか、モリカケ問題だレスリングの栄さんがとか、宮沢りえと誰だかが結婚とか、振袖レンタルだとか誰が不倫して、誰かが事故を起こしたとか、めちゃイケが終わるとかどうとか、そういうニュースが連日発信されていますが、

ホントに興味ある人って、いる……?
ど~~~~~でも良くないですか?

ぼくが特殊なわけじゃないと思うんです。
マスコミが向き合うべき「マス」って、日本に存在してる気がしない。
そんな状況の中で、「マス」メディアが担う役割、発信すべき情報ってなんだろう?

っていう話をすると、マスコミ志望の学生は
「だからこそ、社会的弱者に光を当てるために……」
「もっと知られるべき問題があって、私はそれを……」
「そんな中でも伝えるべき情報があるはずで……」
と言ってくれます。

いやいやいやいや、まあまぁたしかにそれはあるとして。
たしかに世の中には、光を当てたほうがいい人たちや知られるべき問題はあるのだけれど、もし自分にそういう問題意識があるのであれば、「その情報やその問題意識は、マスメディアを通して伝えるのが最適なんだろうか?」ってことを、いったん冷静になって考えてみたほうがいいんじゃないかと思うんです。
一方で、もしその問題意識がないのであれば、この「マスなき日本」の中で、自分はどんな人たちに、どんな情報を発信することで、どんな価値を生み出していこうとしているのか、ってことは、ちょいと考えてみたらどうだろう、と。

だって、世の中のビジネスにはすべて顧客がいて、そこに価値を届けることで成り立っています。
だから営業がいたり、マーケティングをしたり、届けたい人に届くように広告をうったりして、顧客に何かしらの価値を提供している。だから、そこにお金が生まれて、ビジネスとして成立する。

そういう意味で、マスコミはこれまで「マス」に投げかけていればよかったわけです。世の中全体がそれこそ「マス」であって、一億総中流なんていわれたりして、ある程度の単一価値観というような相手に情報を発信していればよかった。

でも、いまはそんな「マス」なんて存在していなくて。
であるなら、そこで発信すべき情報はなんだろう。本当に「マス」コミである必要があるのかな? 他の選択肢はないのかな? そもそも今の自分がもっている問題意識って、本当に仕事として心からやりたいと思ってることなのかな? さらには、その問題意識を発信することで、誰にとっての価値が生まれるんだろう? 受け手はそれを喜んで受け取るのかな?

マスコミって、いろんな業界の中でも「企業のマヌーサ」にかかりやすい度でいったら、トップクラスです。
最初はちょっとした憧れ気分だったものが、就活としてエントリーを考え始めた瞬間から、どんどんマヌーサにかかっていく。深みにハマっていく。んで、「それが本当に自分がやりたいことなんだ!」って思い込みになって、自己暗示をかけていく。

最後にもいっちょ書いておきますね。

現代の日本に「マス」はないよ?
そこで何を発信していくんだろう?
本当に「マス」コミがいいのかな?

そこに明確な答えと方法とアイデアがあるのなら、そういう人は日本のマスコミを変えられる可能性があるかもしれないこともありうる余地がある場合もないとは言い切れないので、ぜひぜひ受けてみましょう。

日本中のあらゆる情報が、届くべき人に届く世界がきますよ~に!!