若い世代の人たちは知らないかもしれませんが、ぼくは『プリントゴッコ』が年賀状の意味を変えたと思っております。
『プリントゴッコ』っていうのは、家庭用の簡易版印刷機みたいなもので、自分が手書きした文章やイラストで版をつくったら、好きなインクをのせてハガキにプリントしていける機械みたいなやつ。
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んで、そもそも年賀状って、年始のあいさつを簡略化したもののはず。
「ホントは会ってあいさつしたいけどな~」
「でも、時間もないし、距離も遠いし、仕方ないから書状で…」
ってのが、本来の年始のあいさつ。

それが本筋なのに、いつのまにか年賀状を送ることそのものが形式になり、そこに『プリントゴッコ』が登場。年賀状を量産化できるようになったわけです。んで、量産化されることでたくさん送ることができるようになったものの、『プリントゴッコ』じゃ、それぞれの人に合わせて書けないどころか、むしろそれで「型」が加速していった、と。

でも、それで疲弊しちゃうって、なんなんでしょう。
「ラクにたくさん印刷できちゃう♪」 がウリだったのに、むしろそれによって「たくさん送る」ことが当たり前になって、余計に大変になってる。特に会社員の人たちなんかは「うわ~年賀状、書かなきゃ…!」って、それは本当に年始のあいさつをしたくて書いているのか? と。


で、ですね。
さらにいえば、そもそも「年始のあいさつ」って、何なんだ?
とも思うんです。

年賀状の定型句って、「去年は大変お世話になりました。今年もよろしくおねがいします」だったりします。何なら場合によっては「旧年中は格別のご愛顧をいただき」とか書くわけです。 


これ、改めて考えてみると、ちょっと違和感ありませんか?
年賀状って、年始のあいさつって、相手のために送るもののはず。
でも、最後の締めが「今年もよろしく」ってのは、どういうことだ? と。

それ、自分のために言ってる言葉じゃないですか。

「去年はホンマありがとう。ほな、今年もあんじょうよろしく頼みますわ~」って、本来相手に向けたあいさつのはずが、最後の最後のところで「今年もよろしく」で締める。「格別のご愛顧をいただ」いておきながら「本年も倍旧のご愛顧を」って、おい。ちょっと調子に乗りすぎじゃあないでしょうか。
なんだか打算的な気配に満ち満ちているように感じてしまうのは、ぼくが腹黒い人間だからなの…???

年賀状って、自分を「よろしく」してもらうために送るもんなのか? と。


なので、年賀状に対する考え方を、リセットすることにしました。
ぼく自身は大学に入ったあたりから年賀状を送らなくなったんですが、今年はちょっとあえて年賀状的なものを再び始めようかと考えています。

というのも、年賀状って年始に送るから、どうにも「これからもよろしく」的な意味合いが強調されてしまうんです。
そりゃ「去年はいろいろありがとう」的なことも書いたりするのだけれど、年始である以上やっぱり話の内容は「今年も」という方向になっちゃう。だからといって、「今年はもっと積極的にお役に立てるようにがんばらせていただく所存です」みたいなことを書くのも違う。むしろ余計に黒ダヌキ的な雰囲気がでちゃいそうだし。


つまりですね。

年始に送らなきゃいいんじゃないか、と。
年始に送るから「今年もよろしく」が打算的にハイライトされちゃう。

だからこそ、送るべきは「年始」じゃない。
じゃあ、いつ送るかといえば、
 
「年末」に送る。
これです。
年賀状じゃなくて「年末状」にしてみようと思うわけです。
(あれ……? なんだか文字にすると「粉末状」みたいになってる……)

年の瀬も近づいたあたりのタイミングで1年間を振り返って、自分がお世話になった人のことを思い返しながら、その人に向けて感謝の気持ちを綴る。まあ、別に文書やハガキじゃなくてもいいと思うんです。そこはLINEでもメールでもFBメッセージでもいいんです。
ただ純粋に「この人がいてくれたおかげで、楽しい時間がすごせたなぁ」とか「この人がしてくれた行為があったからこそ、今の状況で年明けを迎えられてるんだよなぁ」ということを考えながら、年末にその感謝の気持ちを伝える。

そうすれば、「この1年間の振り返り」的な、「この1年間の感謝の精算」みたいな雰囲気がでそうな感じがしません?
そうすれば、「来年もよろしく」に含まれる打算的な、ちゃっかり自分のことで締めやがって的な意味合いが減りそうな気がしませんか?
もっと言えば、年賀状を出すことを前提に「あ~、この人には何を書こうかなぁ…」なんてことを迷う必要がなくなりそうな気がしません? だって「感謝したい人」にだけ送ればいいんですもん。


年賀状にはあんまり意味を感じなかったけれど、
この「年末状」は、積極的にやりたい意欲がでてきます個人的に。

さあ、みんなもやろう、年末状!