さて、10月。
新卒採用にかかわって十数年ともなると、この10月1日っていうのはそれなりに特別な感覚がありまして、今でこそ採用の情報解禁は年明け以降になっていますが、やはり「また次のシーズンが始まるなぁ」という気持ちが湧いてくる時期なわけであります。
なんとなく気ぜわしく落ち着かない学生も、インターンに行ってみたり四季報を買ってみたり、とりあえずは筆記の勉強でもしておこうかななんて対策本を買ってみたりしはじめたりもするんじゃないかと思います。

そんな学生たちに声を大にして伝えたいのは、

今から就活の準備なんてせんでええよ。

に尽きるわけであります。
これは毎年毎年言っていることですが、今からそんな「就活!!」とか「就活ェ……」なんて考えなくていいです。だいじょうぶ。
それこそ将来子どもができて、「お母(父)さんは大学時代なにしてたのん?」とか聞かれたときに、「1年間は就活してたんだよ」なんて言わずにすむようにしましょう。

学生にとっての就活、つまりは企業にとっての採用活動というのは、「社会人として活躍できる人」が認められ評価されるゲームです。
どれだけインターンや業界研究、セミナーや筆記のお勉強をしたとして、果たしてそれは「社会で活躍する」上で必要な力なんでしょ~か、社会に出たあとにどれだけ使える経験になるのでしょ~かって話です。な~んの役にも立たない。

要は、就活だって仕事と同じで、
「仕事ができるようになる。そのための力を磨く、身につける」
のが大事なのであって、
「就活が上手になる。就活を切り抜ける力を磨く」
ということが目的では断じてないわけです。

じゃあ、そういう一般的な就活がダメなら、何をしたらいいのさ、と。
大学はガイダンスやら何やらでどんどん焦らせ煽ってくるし、親もなんだか気にして声をかけてくるし、SNSでは意識高い系の知り合いが「セミナー参加してきたよ!」なんて書き込んでる。
何かやらなきゃと思いつつ、「そんなんやっても意味ないよ」なんて、どうすればいいのか、というと、ぼくの考えはこうです。

肌感覚で社会を知る。

これですね。
肌感覚で社会を知り、そんな経験をたくさんしておく。

「肌感覚」って何かというと、いわゆる一般的な就活がダメなのは「頭」がメインになっちゃってるからなんです。
インターン然り、業界研究然り、マナー然り、もろもろどれも然り。知識を増やし、情報を詰め込み、正しい型を覚えようとする。それってぜんぶ「頭」の話です。

初めて自転車の乗るときに、どれだけ本を読んだからといって乗れるもんじゃありません。どんな一流選手の講演を聞き、著作を読んだとして、スポーツが上手くなるわけじゃない。海外の本をたくさん読んで、それで海外に行った気になれるんなら旅行なんて必要ない。頭で理解するのと、実際にやるのでは経験値として雲泥の差があるわけです。「頭でわかってる」だけじゃ、通用しないのは当たり前。

「肌感覚」は、「体で覚える」ってのともちょっと違います。
「頭」に対する「体」ってわけでもなくて、それこそもっと「感覚」的なもの。

たとえば、「仕事ができる人」をイメージしたり、人に説明しようとすると、学生の言葉はどうしても曖昧でステレオタイプなものになりやすい。それって、肌感覚で「できる人」を知らないからです。
他にもたとえば、30代のスーパーの店長さんと40代のITエンジニア、50代の製薬会社の部長さんがいるとして。それぞれの社会人と話をするときには、人によって話題や接し方は違って当然です。
幼稚園児に接するのと中学生と接する場合、はたまた大学生との場合で話題や接し方が変わるのと同じように、社会人もそれぞれお互いに気持ち良く話せるようにしたほうがいい。
それができるかどうかって、単なる知識や情報じゃなくて、肌感覚。

学生には、「肌感覚で知ってる社会」が絶対的かつ圧倒的に足りないわけです。

それで実感も肌触りもない「社会」しか想像できない。
カサカサで薄っぺらな知識で構成された「社会」しか考えられない。

そんな状態でいくら「就活的なこと」をがんばっても、砂上の楼閣、絵に描いた餅、机上の空論のエレクトリカルパレード。血肉化された言葉が生まれないから、そりゃ企業の人たちにも伝わらいのは当たり前っちゃあ当たり前の話です。

だからこそ、まずは「肌感覚」で社会を知ること。
今のうちに「社会」に触れて、肌で感じてみる。

四季報や新聞の中は言うまでもなく、インターンやセミナーに行ったって、そこには「肌で触れられる社会」はありません。
そんな高尚ぶったところじゃなく、近所のスーパーや昼ごはんを食べている飲食店、さらにはamazonで買った商品を配達してくれる人たちや街ですれ違う人たちにすら、肌で触れられる社会があります、実は。そこに気づいてみる。できればもうちょっと積極的に触れにいく。むしろできれば自分で、そんな場をつくってみちゃう。

変な就活をするよりも、そんな肌感覚で知ってる社会が多ければ多いほど、就活にも仕事にも「使える」力が身につきます絶対に。

ま、いちばん手っ取り早くて、いちばん密度が高いのは飲み屋。そのへんは、これまでにも何度も書いてるので、下記のリンク先を見てください~。

「これから就活」の人たちが就活病になることなく、肌感覚で社会を知ることで真っ当な就活ができますよ~に!!