ぼくは多読というほどでもないけれど、人並みよりは読んでるとは思います。
学生や若手社会人にもそれなりに「この本いいよ」なんて話をしたりするわけですが、ぼくは読書をするにあたって、全部の本を「隅から隅までしっかり読み込む」ということは(特に社会人になってからは)していません。サクサク読むものもあれば、200ページ程度の本を1週間かけて読むこともあります。

基本的には1ページ1分を目安にしつつ、目次と気になる項をざっと読んだ上で、「どのスタンス、どれくらいのスピードで読むか」を最初に決めちゃいます。
手にした本すべてを同じペース・同じスピードで読むわけじゃなくて、自分が求めるものが満足すればいい。そのためにどんなスタンスで読むかを、読む前に判断しておきたい。

そんなぼくの「本の読み方」をざっくり整理すると、大きく6つ。
今日は、そのへんを言葉にしてみよかと思います。

その6つというのは、
1.知識・情報を得る。★★☆☆☆
2.感覚を知る。★☆☆☆☆
3.視点と言葉を拾う。★★★★☆
4.思考材料。★★★★★
5.専門外の知見を得る。★★★☆☆
6.エンタメ。☆☆☆☆☆
の6つ。(星の数は優先度)


1.知識・情報を得る。
たしかに読書の目的であり、楽しさのほとんどがここに集約されるとは思うのですが、ぼくの場合の「知識・情報を得る」というのはもうちょっと狭義の話。

ここで「知識・情報」というのは、新しい知見を得るというより自分の武器を強化する知識と情報というイメージ。自分の中でターゲットや目的がわかっていて、その上で、より輪郭を明確にするための仕入れ読み。ゆ~たら「インフォメーション」を得るための読書です。

なので、「そうだったのか!?」とか「そういう考え方もあるわな」ではなくて、「これ使えるな」とか「そのへん踏まえてもうちょっと整理しようかなぁ」という情報を得るための読み方が、このタイプ。
なので、この読み方は必要な情報をスキャンしながら読む感じ。知ってる知識や情報はどんどん飛ばす。1ページ1分かけずに読みます。「3行一気読み」くらいで読むのがこれ。

2.感覚を知る。
んで、「1」とは真逆で、知識や情報でもなく、これまでに自分がもっていたものでもなく、自分とは違う感覚や雰囲気や価値観やセンス。そうしたものを新しく感知する読み方がこれです。

ぜんぜん興味がなかったり、自分にはよ~わからんと思っているけれど、世の中的には評価をされているらしいものを拾っておきたい。その感覚を知りたい。

それこそたとえば、はあちゅうゆうこすの本なんかはこれです。
内容そのものよりも、自分にはない感覚を知るための情報収集。自分より若い人たちが、何に共感したり、どんなスタンス、どんな言葉に反応するのかをわかっておく。
こういうタイプで読むときは、だいたい1分で5ページちょいくらいのイメージ。200ページだと、30分弱で読む感じです。文字が多いマンガと同じくらいのペースです。

3.視点と言葉を拾う。
ぼくが「本を読む」ときに、いちばん多いのがこのタイプ。
著者と考え方の方向性や知りたい分野が近いことを知った上で、「プラスアルファ」を得る。自分にはない言葉の使い方、思考の整理の仕方、光の当て方の違いを知りたい。

成毛眞とかちきりんさんとか藤原和博とかがそう。
彼らの視点や言葉、表現方法やアプローチの妙を学ぶ。自分の幹を太くしてくれるような言葉や視点を拾うイメージ。
意見的なものはだいたい「おっしゃると~り」だったりするので、新しい知識や情報を得るというよりも、「その手があったか!」に気づくための読書。そんな伝え方、そんな言葉の選び方、そんな視点のアプローチを吸収したい。
こういう本を読むスピードは、ちょっと早め。3分で5ページくらいのスピードで読むことが多いです。

4.思考材料。
こういう本に出逢ったときこそ、人生の至福。
こんな叡智が、2000円もせずに買えてしまっていいのか!??
この出逢いで、人生の幸福が20%は上がったはず!!!
というくらいに、琴線にビビビときちゃう本。それがギュギュギュっと詰まりきった本との出逢い。

そんな本に出逢ったら、読み捨てることなんてできません。
自分の問題意識、自分のアイデア、自分の生きがい、自分の価値観や美意識。そうしたものに大きな影響を与え、それこそ行動や思考に大きな影響を与えるような本。

そんな本を、サラサラ2時間程度で読むのがむしろもったいない。
この文章、この言葉を得て、そこで自省。そこで思考。5ページに1時間かかることもあります。それくらいのヒントや刺戟や示唆が盛り込まれまくり。しかも、そういう本は何度読んでも色褪せない。どころか、改めて読んでも「ここの意図は気づけてなかった……」なんてこと数え切れず……。
ドラッカーの『経営者の条件』を筆頭に、チップ&ダン・ハースの『アイデアのちから』、ペン・パーの『アテンション』なんかは、ぼくのバイブル。『確率思考の戦略論』とかもすごい。ジャンルは違うけれども、開高健師匠の作品だってそう。

知識や情報だけじゃなく、人生へのスタンスを常に刺激してくれる。自分を振り返り、思考を促進してくれるこういう本は、じっくり膝を突き合わせて、しっかり時間をとって向き合いたいんです。

5.専門外の知見を得る。
こういう本には、意識的に手をのばしてます。
読書って、ともすれば自分の興味に合った本だけを読みがちなわけですが、それじゃあ人としての深みも滋味もおもしろみも生まれにくい。それこそ専門バカになりかねない。

ぼくが読む本は、ビジネス系や実用書、人事系や心理、マーケティング(あとエロス系)に寄りがちなんですが、それだけばっかりだとどうにも狭くて豊かになりにくい。
それに、専門外の知識・教養があると、専門領域でも新しいアプローチや違った視点の発想が生まれたりもします。だからこそ、違う分野も知っておきたい。

ミラーニューロンの発見』だとか、『音楽の聴き方』とか、『最貧困女子』や『新・観光立国論』。『遺伝子は、変えられる。』なんかもおもしろいし、『山頭火随筆集』にも新しい発見があるわけです。
そういう、「これまでの自分にはなかった考え方やジャンル」って、深みや豊かさを醸成してくれる気がします。そんな本もたまには読まなきゃもったいない。

6.エンタメ。
ここ十数年ではほとんど読んでないけれど、これも読書の楽しみ方。
伊坂幸太郎とか東野圭吾、万城目学や有川浩とかの本も、時間があるときには読んでみるのもいいかもしれません。ぼくも中学生のときには『アルスラーン戦記』とか『フォーチュン・クエスト』も楽しく読みました。



以上、本の読み方は人それぞれ。
ぼくももちろん、すべての読書を「このタイプ!」と分けてるわけじゃなくて、「知識であり感覚だよなぁ」ということもあるし、視点を拾いつつ思考材料にするということもあります。エンタメかと思って読んでたら、感覚を刺激することがあったり、思考材料になることもある。

ただ、むやみに「ぜんぶしっかり読まなきゃ!」とかじゃなくて、どんな本を、何を求めて、どれくらいの時間をかけて読むか。そんなことを考えながら読むと、もっともっと読書も人生も有意義になるんじゃないかと思うんです。
ぼくの本の読み方が何かしらの参考になれば、と。

素敵な読書ライフを送って、本からたくさんの学びを得る人が増えますよ~に!!