毎年恒例のことですが、「もう猿基地の周年かぁ」と考えているときは、同時に焼酎イベントの準備を進めている時期でもあります。

今年で5年目となる開催。
当初は5蔵でスタートしたこのイベントも、今年はその倍の10蔵が参加してくれるまでになりました。気鋭の蔵元や各所の酒屋・飲食店の間でも「あの京都のイベントは一度は参加してみたほうがいい」という評判になってる、なんていう話も聞きました。

イベントそのものとしては、参加してくれたお客さんからも好評をいただき、蔵元からも「ちゃんと毎年クオリティが上がっている」との言葉ももらったりして、とりあえず成功とも言えるかもしれません。
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とはいえ、ですね。

イベントの成功は、あくまでも「イベントの」成功。

それで喜んでくれる人、愉しんでくれる人が多いことは、とてもとてもうれしいことです。ありがたいこと。

ではありながら、ぼくらとしては、イベントはあくまでも「手段」です。
というのも、ぼくらが実現したいのは、イベント当日「以外」の残りの364日に若い人たちが日常的に焼酎を飲んでくれるようになること。そこに近づくために、イベントという手法を使って、蔵元と直接会ってもらって、話をして、焼酎の愉しさや面白さ、気軽さと奥深さ(もちろん美味しさも)を知ってほしい。感じてほしい。


今回、イベント開催の1ヶ月前に、鹿児島と宮崎に行ってきました。
7年ぶりの蔵訪問(昔の訪問はこちらから)で、それはそれはたくさんの学びがあったんですが、その話はいつか改めてするとして。

2泊の鹿児島・宮崎の夜。

初日は鹿児島の蔵元や蔵人、地元の酒屋さんなど総勢20名近くで焼酎を飲みながら語り合い、3軒目では上大迫さん(小牧蒸留所)と1対1で飲ませていただき、2日目は幸一朗さん(渡邊酒造場)と柳田さん(柳田酒造)と。

そんな濃密かつアツい飲みの場で、ふと思ったのは、

「焼酎の世界って、むっちゃ部屋があるマンションみたい」

だから、ぼくら飲食店がちゃんと案内しなくっちゃ、と。
それぞれの部屋が独自のデザインで、多種多様な部屋が繰り広げられてる超大型マンション。その各部屋の中では、蔵元・蔵人たちが創意工夫を凝らして、百人百様の焼酎を用意して待っているわけです。

けれど、多くの人たちは、その大きな大きなマンションのエントランスを入ってすぐの部屋にしか入らない。黒霧島だとか二階堂だとか、ちょっと奥まで行っても「れんと」や鍛高譚の部屋までしか行かないし、行けないんですね。
もうちょっと奥に進めば、もっともっと楽しくて面白くて、多様な味覚や鼻腔をくすぐる芳香な香りをもつ、いろんな焼酎の世界が広がってるのに、そこに辿りつかない……。


とてもとても、もったいない。

あともうちょっと、興味をもったり何かのきっかけがあったり、誘導係がいたり期待感が生まれたりさえすれば、その先にはむちゃくちゃおもろい焼酎ワンダーランドが広がってる。
それこそぼくが常々言っているように、「焼酎は世界で最も遊びの幅があるお酒」です。
だからこそ、あともうちょっと、この厖大で壮大な焼酎マンションの敷居をまたいで、もうちょっと、奥のほうまで行ってみてほしい。


んで、その役割を担うのが、飲食店のはずなんです。

多様な焼酎があり、多様な蔵があり、ひとつの蔵にもいくつもの焼酎が揃っていて、そのうちのひとつの銘柄だけでさえ、飲み方を変えるだけで味わいも香りも全然ちがったものになる。
そんなおもろい焼酎ワールドの敷居を下げて広げて、マンションに訪れた飲み手をもうちょっと奥まで誘(いざな)うアシストをするのが、ぼくら飲食店の役割のはずなんです。

マンションの入口近くでロックだ緑茶割りだ梅干しだとか、目玉は魔王だ村尾だ森伊蔵だと言ってみたり、自分で扱っている焼酎の説明もできないような飲食店もあります。それでいて、仕入値の2倍や3倍の値段をつけたりしてるわけです。

たとえばぼくは、「世界で一番、学生を焼酎の愉しさに目覚めさせてる店」と自負してるわけですが、卒業生たちが「東京で、赤鹿毛おいてる店が見つけました~♪」とか「麦麦万年、飲みました~!」と報告してくれるのだけれど、それでもその後には「でも、やっぱり猿基地で飲んだほうがうまいっす」と続いちゃう。

や、それはうれしい。
ぼくも焼酎を扱ってる冥利に尽きる。
けれど、やっぱり「そのへん扱ってるなら、しっかり出せや!」とも思っちゃう。

とはいえ、ぼくがそんなことを考えて、世の中の飲食店が変わるわけでもなく(アンコントローラブル)、ぼくはとにかく粛々と楽しみながら、「この蔵はね~」とか「この焼酎はこう飲むと良くってさ!」とか「蔵元はこんな人で~」なんてことを言いながら、焼酎の愉しさを感じてもらって、これからも焼酎マンションの受付・案内担当として、若い人たちを焼酎の世界に誘っていきたいと考えています。



ともあれ。
今回、ぼくらの焼酎イベントに参加してくださったみなさま。
猿基地で焼酎を愉しんでくれているみなさま。
普段から焼酎を飲んでくれているみなさま。
そんな人たちに感謝を込めて、これからももっと焼酎を愉しんでもらえるように、ぼくはぼくなりに猿基地でわいわいやっていこうと思っております。

イベントにかかわってくれたみなさま、ありがとうございました~♪
これからも焼酎を飲む若い人が増えていきますよ~に!!