大阪の新たなエースの地位を確立した。
そう言えるくらいの実力者になったといっても良いんじゃないかと思います。

それが、石野貴之。
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ボートレースの歴史では、どの時代にも常に大阪支部のエースがいました。
SG優勝回数歴代1位(17回)を誇る「モンスター」野中和夫を筆頭に、獲得賞金トップ(35億円)を更新し続ける「王者」松井繁。さらには最年少賞金王(25歳)の「怪物くん」太田和美と、艇界トップタイの3度の賞金王に輝いた田中信一郎の同期コンビ。その後は、最強世代の銀河系軍団85期を代表する湯川浩司。

そんな各世代で、「ボート界のリーダー」とも言える存在感をもつのが、大阪のエース。
そこに、ついに世代交代の時期がきたわけです。

昨日までの6日間、SG中のSGと呼ばれる「グランドチャンピオン」で、初日から4日目までの予選の6レースを1着4本、2着2本という成績を残し、盤石の態勢でセミファイナルとファイナルを駆け抜けての優勝。

これで通算6度目のSG制覇。
ついに石野貴之が、歴代の先輩レーサーたちから「大阪のエース」の称号を自力で奪いとった。そんな大会が、今回のグラチャンだったと思います。

もちろんこれまでだって十分に活躍していたし、ここ2年はほぼすべてのSGレースに出場して、ファイナル出場11回、優勝5回という成績を残していました。
それでありながら、やっぱり過去の「大阪のエース」と比べると、「強いSGレーサーの一人」というレベルは否めない。大きすぎる先輩レーサーの「次」くらいの印象でした。

ついに今回のグラチャン制覇で、それを拭い去ってボート界のリーダーとしての大阪のエースになったのは、実績もさることながら、そこから醸し出される空気によるものだと思うんです。
いわば「風格」が漂い始めた、というようなもの。


ぼくがボートレースが好きなのは、レースのダイナミックさだとか予想をする楽しみだとかもあるのだけれど、それ以上に「選手の成長」が見られところにあります。
トップレーサーともなると、それはもう徹底的にプロフェッショナリズムを貫いていて、風や波や気圧が刻一刻と変化するのを察知して、プロペラやエンジンの設定を変えていく。瞬間の判断力やちょっとした体重負荷のバランスを駆使して、まさに0.1秒の差、0.1ミリの差で闘っているわけです。

そんな彼らがレース中の6日間で何に対して、どう動くのか、それは何を考えているからなのか。どんな言葉を発して、どんなレースをするのか。
そんなところに注目しながらレースを見ているから、ぼくにとっては「ギャンブルとしての競艇」という見方じゃなくて、もはやビジネスにも通じる「職人のプロフェッショナリズム」であったり、生き方の姿勢、成長への意志という部分で、本当にたくさんの刺戟をもらえます。

そういう意味で、今回の石野貴之を見ていて、「泰然自若」ってこういうことなのか……!? というくらいの風格を感じるようになったんです。
目の前の「やるべきこと」に徹底的に向き合う姿勢。コンマ数秒、コンマ数ミリまで妥協しない理想の追求。まわりに心を乱されない集中力。期待に応えるための意志。起きうる状況を想定する想像力。プレッシャーに打ち勝つ精神力。
まさに「心技体」が揃ったプロフェッショナリズムを見せてくれた石野貴之が、今回のグラチャンを制して、大阪のエースとしての風格を漂わせはじめたわけです。


いやはや、やっぱりボートはおもしろい。
今回、abemaTVが公営競技初のプログラムとして、ボートレースをとりあげてくれたけれど、もっとそういうレーサーの人間的な部分とか、ストーリー的な部分にもフォーカスしてくれたら、もっとボートが世の中に広まるのにな~!! 舟券予想もいいけれど、もっと「人」や「物語」といったドキュメンタリーテイストの編集・発信をしてくれたら、なんてことを思いました。

もっとボートレースの魅力が、多くの人に伝わりますよ~に!!
楽しく、気持ち良く、適当に!!