どうにも勉強が足りない採用担当が増えているように感じる昨今。
それは、学生にとってむちゃくちゃ不幸なことでありつつ、さらにはそんな採用担当を置いている企業にとっても、すごく損をしている状態なわけです。そんな学生の不幸と、企業の損を減らすべく、人事系の仕事をする人として、最低限これだけは押さえておきませんか? という知識・情報を昨日と今日の2回にわたって、とりあえず紹介しておこうというシリーズの後編。
今日は、人事・採用系の情報収集をする上で、この5人をチェックしようのコーナー。

曽和利光

もう、何をおいてもこの人。
リクルートでの膨大な採用経験と、ベンチャーでの新しい採用手法の実践、京大からずっと専門としている心理学の知識を踏まえつつ、現状の採用の現場に向き合ってる曽和さん。
企業で採用にかかわっている人で、この人を追いかけてないなんてありえない、ってくらいに採用の最先端を切り拓いてる人です。
曽和さんの何が素敵って、膨大な情報やしっかりとしたロジックは元より、「人」に対するやさしさなんですよね。人が「よく生きる」ということに対して、本当に真摯に向き合っていて「いつか急にビジネスの世界から足を洗って、僧侶になっちゃったりするんじゃないか」って思っちゃったりもするくらいです。
それでいて採用の現場に対する視線は本質的で、批判・検証・実践のスタンスで取り組んでる。

この記事なんかは、すべての人事が読んでおくべきだし、近著の『ネットワーク採用とは何か』もあらゆる企業が読んで考える必要があると思ってます。(表紙やレイアウトはちょっと微妙ではあるけれど……笑)
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高橋俊介・金井壽宏

学者さん枠からは、このお二人。
人事・採用系の学者さんって、案外現場を経験せずにそれっぽい難しいことをそれなりに書く人が多いのだけれど、この人たちはしっかりと現場に即したリアルな情報をベースにした研究をしてる、学者さんの中でも的確な人事論を発信してくれてます。
高橋さんはもともとコンサル出身の人なのでわかるのだけれど、金井さんは学者一本でありながら、ホントーに参考になる理論・情報・考え方を教えてくれます。
それこそ昨日の記事にも書いた、計画的偶発性理論やエドガー・シャインの研究に関しては、国内でも指折りの(というかほぼ唯一の?)研究者。

高橋さんは最近あんまり著作を出してないけれど、入門編なら『キャリアショック』とか『キャリアをつくる9つの習慣』あたり、専門的なほうでは『ヒューマン・リソース・マネジメント』なんかも読んでおきたいところ。ちょっと古めの本だけれど、1章の基本的な考え方とか、3章の人の能力を定める4つの切り口の話は、いまも変わらない大事な視点だと思います。
金井さんは、だいたいどれを読んでも参考になるので、Amazonでチェックして興味のあるやつから読んでみるといいかもしれません。

2人の共著のこれなんかも、なかなかおもしろいし、
キャリアの常識の嘘
金井 壽宏
朝日新聞社
2005-12


これはシャインの著作の監修で金井さん。
ぼくは読んでないけれど、とても良さそうな気配……!! 採用にも使えそう。ってか使えるに決まってる。

曽山哲人

逆にこちらは現場も現場、あのサイバーエージェントの人事責任者で、社員の活躍を最大限に引き出すために実験的ともいえるような制度を生み出している、最前線のリアルを知っている人ですね。
サイバーエージェントって「キラキラ女子」とか言われてるけれど、そのイメージだけで捉えているとぜんぜん的ハズレなわけで、勘違いしちゃってる人も多いんじゃないかと思います。
ネットの広告会社って、もともとは「代理」店でありながら、いまはどんどん自前のプラットフォームを持ってきているわけです。そんな新しいビジネスをしているというのが本質で、だからこそそこでの人事制度設計に対して、曽山さんは徹底的に試行錯誤をしてきてる。

企業の人事で、本当に社員や新卒採用のことを自分で徹底的に考えて向き合っている人って、けっこう少ない、とぼくは考えています。もしくは、曽山さんや曽和さんを見ていると、それ以外の「社員に向き合って、考えている」と言っている人たちも嘘ではないんだろうけれど、まだまだ足りていないよね、と。
ある意味、曽山さんの人事の考え方って、いわゆる「王道」であったり、「定番」的なものとは違う部分もあるけれど、その根底にある「社員の活躍」という考え方を知ること、そこから徹底的に考える道筋を知るということにおいて、やっぱり現場の最前線の情報とスタンスを学ぶ上で曽山さん情報ははずせない。

それこそ上記の金井さんとの共著も出しているので、これも読んでおきたい一冊です。

城繁幸

最後はこの人、城繁幸。
もともと富士通の人事で、今は人事コンサルタントとして、切り口鋭い論評をしています。
著作では『若者はなぜ3年で辞めるのか』が(たぶん)ベストセラーですが、それよりもブログを追いかけておくだけで、人事・採用のニュースやその見方について、新しい視点をくれる人。変な感情論や偏見ではなく、ときには政治とも絡めた情報発信をしてくれます。


ということで、この5人。
人事や採用にかかわってるのに読んでない、追いかけてないなんて、いったいどうやって仕事で成果を出していこうとしてんねん、ってくらいに不勉強です。学生たちがちゃんと幸せな就活ができるように、社員がしっかり楽しく働いて成果を出せるよう、そして企業が損することなく業績を上げていけるように、ぜひとも人事・採用にかかわるみなさんは、しっかり情報収集をしてくださいますよ~に切にお願い申し上げます。

採用活動もしっかり楽しく、気持ち良く、適当に!!