「身のほどを知る」というのは、とても大切なことだと思うんです。
それはイコール、自分にとっての良い環境を知るということでもあるわけです。

ぼくが住んでいた栃木県は、偏差値的な意味で「トップ」と言われる高校が北部・中部・南部にそれぞれ1校ずつあって(当時)、それらはぜんぶ男子校でした。ぼくは、「女性のいない環境で3年間もすごせるかいッ!!」と考えていたので、その下のレベルの高校に進学しました。

就職では、人材系のトップ(当時)の会社と、140人の会社から内定が出て、後者に入社しました。
今ふりかえっても、トップ校に行かなくてよかったし、トップ企業に入らなくてよかった、と思っています。

なぜかというと、トップに入るとトップになりにくいから。
これが、人の活躍という意味ではかなり大事だと思っています。

や、もちろんトップ組織に入って、そこでもトップを目指してとんでもない努力をして、実際にトップをとるような人を否定しているわけじゃありません。そういう人たちは本当にすごいと思うし、それはそれでたぶん素敵な人生。

ぼくの場合は、高校時代はとりあえず上位10%には入れていたし、なぜか生徒会長とかをやることにもなったりしました。会社員時代も、営業では大したことがなかったものの、制作の仕事ではトップを何度もとることができました。

そんな経験が、ぼくの人生を通しての自信の形成にそれなりに大きな影響を与えていると思うんです。

基本的にぼくが考えているのは、人間の先天的な能力には大した差はなくて、能力を引き出したり伸ばしたり、「成功」するかどうかは、意欲ややる気やモチベーションのほうが大きく影響するということ。

そして、それはおそらく「成功したことがある」、「ちゃんとやったら成功することを知っている」と、形成されやすいはずで。「がんばっても、うまくいかない……」とか、「これだけやってるのに成果につながらない」という経験を繰り返してしまうと、どんどん自信を失っていって、それがさらに「成功」から遠ざかっていくネガティブスパイラルが発生するというアリ地獄。

そうなるくらいなら、トップ集団なんかじゃなくても、それなりにしっかりやったらトップをとれる環境を選んだほうが、人生が楽しくなる可能性が高いんじゃないかな、と思うわけです。


という話を、「大手企業に行きたい!」と考えている学生がいたら、伝えておきたいな、と。
無理して大手に入ったからといって、そこにはさらに優秀な人たちが集まっていて、人数も多ければ、競争も激しい。知名度の高さを求めていったって、入社してしまえば周りの人たちはみんな同じ会社の人たちなわけです。知名度も何もあったもんじゃない。
(大手だからといって優秀とはかぎらないし、むしろいい子ちゃんばかりだったり、保守的な人たちばかりだから、逆に存在価値が高まるという考え方もあるけれど、それはまた別の話なので今回は置いといて)

そんな状態になるくらいなら、自分がトップをとれる可能性があるくらいのところでしっかりトップをとっていくほうが、精神的にもいいし、むしろ能力が上がりやすい。
努力をしない、ということじゃなくて、努力のコストパフォーマンスの最適化。

だから、「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、本当に至言。

働く環境を選ぶ上で大事なポイントは、「しっかり活躍できそうかどうか」であり、「仕事を通して自信をつけられそう(無くさなそう)かどうか」かもしれません。業界や肩書きや知名度なんかじゃありません。

んで、もちろんそういう環境かどうかを判断するには、自分のことをちゃんと知っておきたいし、世の中にあるいろんな環境のことも知っておきたい。
つまりはいわゆる相場観。

そりゃ「牛口」になるのがベストっちゃあベストです。
ただ、そのためには「鶏口」あたりからはじめて、「豚口」くらいにレベルアップして、「鹿口」なんかを経ていくくらいの気持ちでいいんじゃないかな、と。そのほうが幸せを感じられる気がします。

ま、何にせよ、みなさんが「口」になれる環境を見つけられますよ~に!!
楽しく、気持ち良く、適当に~。