ぼくが高校生や大学生の頃、ちょっと小難しい本や雑誌によく書いてあったのが、「アイデンティティ」という言葉でした。

「自分のアイデンティティを確立すべく……」
「アイデンティティを失った若者が……」
「揺るがないアイデンティティを……」

もしかしたら、高度成長期からバブルという「一億総〇〇」みたいな流れがあったからなのかもしれないけれど、なんだか流行りのように「アイデンティティ」という言葉が世の中にあふれていたように感じます。それこそ、みうらじゅんの『アイデン&ティティ』のマンガの刊行が1992年、映画化されたのが2003年です。ほぼぴったり。

ぼくも中高生の頃は「自分としてのアイデンティティを持たねば!!」なんてことを考えていたのだけれど、ある時期からちょっとした疑問を抱くようになってきました。

「そもそも、アイデンティティって“確立する”ものなのか……?」って。

何がどうなったら、アイデンティティは確立できるのか。
何をもって、アイデンティティが確立したと言えるのか。
そもそもアイデンティティのない個人って存在するのか?
なんてことを考えるわけです。

そんなこんなで、なんだかんだで、かくかくしかじかがあって、ぼくが出した結論はこうでした。

「アイデンティティの確立」よりも、「価値観の幅を拡げる」ほうが大事

だってですね。
アイデンティティなんて、いくら考えてもわからんわけですよ。

どれだけ自分が、「これがおれのアイデンティティだ!」なんて考えたって、誰かが「や、それは違うで?」と思ったら、その時点でアイデンティティじゃないわけです。ただ、自分がそうだと思ってるだけで、他者から見たら「その人にしかない個性」なんかじゃぜんぜんない。
それで「人から否定されたくらいで揺らぐようなアイデンティティは、本当のアイデンティティじゃないんだ」とか言われても、世の中には誰かを否定する人はいくらでもいるわけです。そんな中で、「い~や! 誰が何といってもこれがおれのアイデンティティ!!」 なんて、そんなアイデンティティ、本当に必要なの? それって本当に確立すべきものなの? とも思っちゃう。

そんな正体不明の「アイデンティティ」を「確立」するよりも、当時のぼくにとっては「価値観を拡げる」ことのほうが大切だと考えたわけです。

だって社会で生きていく上で、「アイデンティティを確立してる人」よりも、「価値観の幅がある人」のほうが、よっぽど楽しく生きてそうだし、人の役に立てそうだし、いろんなアイデアを思いつきそうだし、怒ったりしなさそうだし、柔軟そうだし、一緒にいて楽しそう。
だからこそ、世の中で言われてるような「アイデンティティの確立」よりも、「価値観の幅をもつ」ことのほうが大事だと考えて、そうしていきたいと考えることにしました。


んで。

これって、いまの人たちが言う「自分らしさ」ってのと近い気もします。
「自分らしさを実現するため……」
「自分らしさを追い求める若者たちが……」
「他人とは違う自分らしさを……」

結局は同じことで、言い方がちょっと変わっただけ。
それで多くの人たちが、「自分」に目を向けて、自分らしさやアイデンティティを探し続ける。
ここ数年、学生のエントリーシートや自己PRを読んでいて、「価値観」を「価値感」と書く学生が増えているのだけれど、もしかしてそういう影響もあるんじゃないかと思ってます。
本来、客観性があるものとしての価値「観」だったのに、自分ありきの感じ方に寄ってきているから価値「感」って書いちゃうのかな、とかなんとか。

だからぼくは今も変わらず、「価値観の幅って大事じゃないかな?」と考えるわけです。

その一番の方法が「相手に興味を持つ」ということだと思うんです。
そして、具体的にはどうすればいいかというと、コルクの佐渡島さんのサイトで書いてあった内容が、とってもしっくりきます。
1 目を見て挨拶をして、一緒に食事をする
2 自分から歩み寄ろうとみんなが意識する
3 会話の量を増やす
4 会話の質を上げる
5 同じ目標を持つ
この記事の内容はチームビルディングの話なんだけれど、人との関係性とか価値観の幅を拡げるという意味でも、この5つのことはとっても大事。猿基地でも、「佐渡島5ヶ条」として意識していきたい。

それこそ大学の価値って、「他者との出会い」であり、「異物を知る」こと。
そんな相手に興味を持って、あいさつをして一緒に食事をする。自分から歩み寄って会話をして、その量を増やし、質を上げる。その結果、緩やかで曖昧でもいいから同じ方向に向かっていく。
そうやって身に付けることのできる「価値観の幅」は、絶対に人生を通して役に立つと思うし、自分(だけじゃなくて、他人の)生活を豊かにしてくれるものだと思います。

猿基地も、そんな価値観の幅を発見できる場所でありますよ~に!!
今日も楽しく、気持ち良く、適当に!!


佐渡島さんの本、まだ読んでない人はぜひ♪

ぼくらの仮説が世界をつくる
佐渡島 庸平
ダイヤモンド社
2015-12-11