名著!
京大式 おもろい勉強法 (朝日新書)
山極寿一
朝日新聞出版
2015-12-07


本屋さんで見つけて、Kindle化されるのを待って購入。
「おもしろそうだな」と思っていたら、よゆ~の想定外。
おもしろいどころじゃない。感銘を受けました。読了後の興奮たるや…。

京都という土地で、
大学生を相手に、
酒を飲みあって、
仕事のことを話したりして、
「おもろい」を受発信していきたい、
と考えているぼくにとって、この本はまさに共感の嵐。


知ってる人は知っている、ゴリラをメインとした霊長類の研究者であり、去年の10月に京大総長に就任した山極壽一さん。

霊長類の研究というのは、もちろん霊長類の歴史を掘り下げていくという側面もあるのだけれど、それは同時にコミュニケーションの研究でもあるわけです。「言葉」というツールを持たないゴリラやニホンザルのコミュニケーション。言葉を使わない「対話」をすることで、山極さんはゴリラの集団の中に入っていく。
それに加えて、ゴリラの研究をするためには現地における人との協力も不可欠です。文化も価値観も異なるピグミーや共同研究者たちと、お互いに心地良いコミュニケーションをとりながら研究を進めていく必要があるわけです。

そんなゴリラ研究を40年以上も続けて、今は京大総長として学生たちを育てる山極さんの言葉が、ビシビシ突き刺さります。

京都という地域の特異性について、山極先生は
京都流の議論は「おもろい」ものを見つけるためにある
と言います。

京都のサロン文化はダイアログ。つまり対話です。(中略)お互いにどんどん変化しながら、共に新たな提案をしていくのです。「おっ! それ、おもろいやんか」と。
この「おもろい」という発想こそ、京都ならではだと思います。相手に耳を傾けさせるような意見を言う。相手に「おもろい」と思わせる。対立して勝ち負けを競うのではなく、共同作業によって、さらに「おもろい」ことを提案していくという対話
一番重要なのは相手を感動させる能力だと思います。それは相手に「おもろい」と思わせることでもあるわけです。
猿基地も、こうでありたい。
それは知り合いのお店のまほロバであったり、カドヤであったり、モジャホールでもそうだと思うんです。

そんな「おもろい」場所、「おもろい」対話を生み出すアイテムのことについても「酒は「ケ」から「ハレ」へのスイッチ」という項で、山極先生は教えてくれます。
私がアフリカで覚えたのは、「誰と」「どんなときに」「どんなお酒」を飲むのかという使い分け。
お酒を飲むと相手とリズムを合わせやすくなり、相手を引き込みやすいし、乗せやすい。「そうそう、そうだよね!」と興奮して自分からも相手に乗れる。さらに自ら提案もできるようになる。普段とはテンションも変わってきます。ここが大事なところで、同調した記憶が自分の身体の中にあると「自分にもそういうことができるんだ!」という自信として積み重なっていくのです。
こうしたハレの時間を日常の対話の席に持ち込めるのがお酒の良いところ。だから、本来は楽しいもので、楽しむためには同調して乗ることが大事なんです。自分を相手に乗せられない人、つまり乗ることを楽しめない人は、お酒の席も、対話もつまらなく感じるかもしれません。
普段は知り得ないような他の世界の人と話ができる場合だってある。一種の異文化交流のようなものでしょうか。だから、酒場は勉強の場にもなり得るんです。(中略)飲み屋は私にとって京大の夜間部とでも言うべき役割を果たしてくれた、もう一つの学校でした。

そうなんです。
猿基地も「大学の夜間部」みたいな飲み屋でありたい。



こうしてさまざまな側面から、人の成長について書いてある本なんです。
んで、この本には、というか山極先生の人生には、常に一貫しているものがある。

それは、「徹底した現場主義」

ゴリラの研究もそう。そのためのアフリカ人との交流もそう。
大学生活だってそうだし、飲み屋だってそうなんです。

この『京大式 おもろい勉強法』で、ず~っと書かれているいるのは「現場で感じて、考えよう」ということ。
これだけインターネットを始めとしたITが発達したことで、「現場」に行かなくてもわかった気になれる。でも、それによって失われているものや見えなくなっているものがあるわけです。
人との関係を築くには、どうしたってアナログな方法しかないのです。ITを使ったコミュニケーションではやはり難しい。相手と対面したうえでの、もやっとした、ボンヤリした信頼空間のようなものを自分の周りにつくっておくことが大事で、どれほど携帯で連絡を密に取り合っても、信頼空間は生まれません。
だからこそ「現場」に入って、「現場」を感じて、「現場」で動いて、考えるということを、山極先生はこの本を通して、自分の経験や京大の方向性を提示しながら伝えようとしてくれている。

学生がもっと「現場」を感じて、それを楽しんでくれたら、世の中はもっともっと良くなる。
んで、そんな場所のひとつとして、猿基地をもっと「おもろい現場」にしていきたい。
酒を飲みながらこの本を読んでいて、むちゃくちゃ昂ぶりました。

いったい自分の根っこがどこと繫がっていて、何についての話を相手に差し出せるのか──。そういう自分の核になるものを常に持っていることが必要なのです。
重要なことは信頼されること。そして、相手に「あなたの話を聞きたい!」と思わせるような魅力的な人物だと思われることです。

はい! 山極先生!!
もっと「おもろい」ことをやっていきます!!