最近って、暗いマンガが多いですよね。
『進撃の巨人』はまだしも、『おやすみプンプン』や『悪の教典』、『アポカリプスの砦』とか、『亜人』とか、『東京喰種』とか、『アイアムアヒーロー』とか、『闇金ウシジマくん』とか、『ザ・ワールド・イズ・マイン』とか(これは好きだけど)、もう暗いマンガばっかり!

すぐ殴る。
すぐ暴力。
すぐ殺す。
悪意ばっかり。
んで、すぐ悩む。

それぞれにテーマはあるだろうし、小説であってもこういうジャンルは昔からあるけれど、ちょっと暗い漫画が多すぎる。とはいえぼくらは、それを読んで「へ~」とか「おもしろい」とか、「そんな世界があるんだ~」とか言ったりするわけです。
何より、こういう暗いマンガって、どうにも夢がないように見えちゃう。暗いのは良いとして、その先に何があるのか。何を目指して、彼らはそんな殺し殺され、暴力をふるうのか、と。そういう現在や将来への希望が感じられないものが多くて…。

んで。
このマンガも、そういう類のだと思ってたんです。

『ギャングース』
ギャングース(1) (モーニングコミックス)
肥谷圭介
講談社
2013-10-25


とりあえず、殴る。
とりあえず、暴力。
とりあえず、殺す。
それはすべて、お金のために!
そんなんやと思ってたんです。

こんなんやし…。
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このマンガ、ただの暴力や金のマンガじゃありません。

社会派エンタメマンガ
です。 

ぼくらが知らない世界。裏の世界を、現実に即した世の中の貧困と生業を描いてる。
詐欺、窃盗、強盗、違法サイト……、彼らがやっていることは犯罪ではあるし、悪いことではあります。それはもちろん、社会的な悪ではある。

でも、それをやる人たちは、なんでそれをやってるんだろう…。

どんな人たちが…?
ただのお金のため?
権力のため?
やりたくてやってるの?


ギャグマンガ的要素もあるし、ピカレスク的な楽しさもあるんだけれど、この『ギャングース』は、単にそれだけじゃない。

このマンガの編集者、関根さんのインタビュー
少年院で相部屋になった4人組がいる。みな親に恵まれなかった少年たちです。彼らは、相部屋になった瞬間に殴り合いのケンカを始める。殴り合うんだけど、彼らにとっては、それが初めて人と正面からコミュニケーションをとった、心を通わせた経験だったんです。それで、殴り合ってからは仲良くなって、少年院を出たら4人で生きていこうと決めた。

だが世間に出たら、当面を生きていくにもお金が必要ですよね。でも手を差し伸べてくれるような身寄りもない。そこで彼らは、奪っても警察に被害届が出せないような、後ろ暗いことをして儲けている犯罪者の収益金を奪おうという計画を立てた。窃盗や強盗を指す隠語を「タタキ」と言うのですが、『ギャングース』は、そういう「タタキ」で生計を立てている少年たちを描いた作品です。

単純に言えば、
『“普通に生きること”に必死で本気』
ということ。
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たぶんぼくのブログを読んでくれている人の多くは、普通に親がいて、親戚も何人かはいて、食べるのに困ったことはなくて、大学にも行っちゃったりして、もちろん戸籍もあって住むところもある、って人なんじゃないかなと思います。
でも、世の中にはそういう「最低限の普通」を送ることさえできない人がいる


「相対的貧困率 16%」

つまり、所得格差の値。
それが、OECD加盟国30ヶ国で4位なんです、日本って。

6人に1人が「貧困」 状態。
しかもこれ、高齢者だけじゃありません。
18歳未満の子どもの貧困率も16.3%。 


そんな日本で、犯罪を生業にして生きる人たちの話
詐欺や窃盗をせざるを得ない環境に生まれ育った人たちの話。
ぼくには『闇の子供たち』に通じるものさえ、感じます。
 
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ベースにあるのは、原作者(正確にはストーリー共同制作者)の鈴木大介さんによる徹底的かつ網羅的な現場取材を元にした「現実」。それが土台にあるから、突き刺さる。マンガの中でも、ちょこちょこ注釈が入っていたり、犯罪抑止のためのポイントが書かれてる。
この漫画は実話を基にしたフィクションです。しかし犯罪の手口はすべて実在しますので、どうか防犯に役立ててください。
って書いてあるのだって、最初は「どーせ単なる逃げ口上なんだろうな」と思っていました。ストーリーをおもしろくするためにヤバい要素を入れつつ、でもそれを犯罪促進に捉えられないようにするためのお決まりの言い訳だと思っていたんです。

でも、全然違う。
この人(原作者)は、本気でそういう犯罪者と言われる人たちに寄り添って、それを産み出す日本の状況に疑問を呈して、エンターテイメントの切り口で表現することで知ってもらおうとしてる。それが、しっかり伝わってくるんです。
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このマンガを読んでて、ぼくらはどれくらい「生きること」、「社会で」生きることに対して本気でいられているのかな、と考えさせられます。そして、豊かに見える日本という国の貧困について。

『ギャングース』。とっても刺激的。

や、なんだかシリアスな感じになりましたが、ホント普通に読んだらちゃんとおもしろスリリングなマンガです。そこまで「社会は!」なんて、真面目なやつじゃないです。そういう意味でも、本当に、マンガってすごい!

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いやしかし、これも『モーニング』の連載。つまり、講談社。
講談社、どんんだけすごいマンガばっかり連載していくんだ、っていうくらい、最近「おもしろい!」と思ったマンガって講談社だらけ。これはもしかしたら、『なかよし』とか『別冊フレンド』とかも読まなきゃいけないんじゃないの…? というくらい、最近の講談社、おもしろい。

最貧困女子
鈴木大介
幻冬舎
2014-11-07