タイトルと表紙の雰囲気で、ダマサれちゃいけない。
この本、すごいです。
 
ひとりよりふたり
伊藤 守
ディスカヴァー・トゥエンティワン
1998-04

たった70ページくらい、文章の量も絵本に毛が生えたくらい。
30分もあれば、誰でも読めちゃうくらいの本。
だからといって「メンタル弱めの人が読む、ふんわり系の本でしょ?」なんて思って読み始めたら、いきなり冷水ぶっかけられます。
「ひとりよりふたり。だからといって、誰かがあなたを幸福にするわけではありません。」
のっけからコレです。
基本的にこのタッチ。 

「ふたりでいたら、幸せも倍だね。うふふ♪」的なノリじゃありません。むしろ、個人として自立しつつ、誰かしらをパートナーとして関わっていく。そんな中での洞察的なヒントをくれる本。

恋愛や友人関係で、相手に没頭したり心酔したり妄想したり、そういうことの夢見がちな人間関係に対して、「王様は裸だ!」と言い切っちゃう。もう身も蓋もないようにも聞こえる語り口。
「あなたの常識と相手の常識が違うことを覚えておいてください。それから、常識は、都合によって、よく変わることも、ついでに。」
「生まれる前から赤い糸で結ばれてるというのは、どこかほんとうです。ただ、その糸は1本ではなくて、数え切れないほど無数にあるらしい。」
ベースにはちゃんと「やさしさ」がある。
人と関係をもつときに、自分が相手に向ける期待や失望があるとして、そうした感情を「ちょっと離れたところから見てみたら?」と客観的な言葉を投げかけてくれる。
ぼくは感傷的になることがほとんどないのだけれど、この本を読んでいると、その言葉の選び方や投げかけ方について「なるほどな~」と思うんです。

「人と一緒に生きること」について、変化球的にヒントをくれる本。
自分用に買うよりも、プレゼントにいいかもしれません。