あしたは多くの会社で入社式。
 学生たちも各所に巣立っていって、新しい環境に飛び出していく。

 ぼくは入社式を「第二の誕生日」だと思っています。
 みんなはその社会人として生まれ落ちる場所を、自分で探して、自分で決めた結果、あしたから新しく社会人として育っていきます。
 たぶん、これまでに学んだ価値観を覆す必要があったり、上書きをする必要があったりすると思います。業界や会社という枠内だけじゃなくて、かかわる上司や先輩、取引先や協業先と仕事をする中で、社会人としてのいろんな新しい価値観に出会います。

 変わる部分がたくさんあります。
 それは、意識的であれ、無意識であれ。
 良くも悪くも、そういう人たちの「刷り込み」を受けて、楽しんだり、悩んだり、苦労したりして成長していくわけです。それって社会人として、もう一度生まれ変わるようなもの。だから、第二の誕生日。

 そんな人生二度目の誕生日を迎えるみんなに。


 1/「キャラ」を忘れないでね。
 社会人になると、いろんな価値観が押し寄せてきます。
 「これはこうすべきだ」「あれはこういうものだ」
 いろんな人たちが、いろんなことを教えてくれます。ただ、その中には、そうしなくちゃ仕事が進まないものと、必ずしもそうじゃないものがあります。

 たとえばぼくが新入社員のとき、先輩や上司から「目標は必ず達成しろ」と言われて、営業として教育されました。そりゃもちろん、仕事として目標を達成するのは大事です。そこには何の異論の余地もありません。
 ただ、ぼくにとっては、そうした格闘種族系マネジメントの方法論では、成果が出にくかった。そもそもぼくは発明家キャラ。そうでありながら、格闘種族のふりをして営業をがんばっても、そりゃあんまり成果にはつながらないわけです。
 それに気づくのに2年かかりました。
 過去の卒業生からも、ときどき相談を受けたりするけれど、だいたいは本来のキャラと違うがんばりかたをしちゃってる。本来の自分のキャラを忘れて苦労しちゃう人たちって、けっこういるように思うんです。

 社会人として新しく生まれ育っていくわけだから、学ばなきゃいけないことは山ほどあります。変えなくちゃいけない部分もたくさんあるはずです。

 でも、キャラは忘れないように。
 悩み始めることがあったら、まずはキャラを思い出してください。
 そこに、何かしらのヒントがあるはずだから。


 2/みんなの評価者は「顧客」だよ。
 クレジット(信用・信頼)があってこそ、社会人です。
 じゃあ、誰からクレジットを得るのか?
 みんなの給料を払ってくれているのは、会社じゃありません。会社のお金は、お客さんからもらっているお金です。んで、お客さんっていうのは、マーケット(世の中)です。別に、いまの取引先というだけじゃない。これからお客さんになる可能性がある人や会社が、世の中にはまだまだ溢れてます。
 そう考えると、社内の評価なんて、ごくごく一部。むしろ、お客さんから評価されれば、社内での評価が上がらないはずがありません。

 自分が、どんな人から、何をもって評価されたいのか。
 そのために、自分に何ができて、どうすることができるのか、どうしたいのか。
 別に「すべての人」から、評価される必要はありません。
 多くの人から広くクレジットを獲得する方法もあるし、特定の少数の人から強くて濃いクレジットを獲得する方法だってあるんです。

 大事なのは、クレジットに対する意識。
 自分も楽しみながら、人にメリットを与えることができれば、それだけで社会人として認められるようになれます。
 Kindle版『就活ゲーム』の最終章に書いたとおり、クレジットを獲得することって、自分だけが楽しむよりも、もっともっと楽しめる可能性が広がってる。

 自分の楽しみは、そりゃ大事です。
 でも、そこに他者のメリットがあるからこそ、ぼくらは社会人として生きていけるわけです。社内だけじゃなく、世の中からクレジットを獲得できる社会人になれれば、どうやったって生きていけるはずです。


 3/成果を出して、ナンボやで。
 社会って、がんばったからって褒めてくれるわけじゃないんです。
 大事なのは、成果を出すこと。
 休日出勤しようが、徹夜をしようが、どんなに叱られながらがんばったとしても、すべては成果を出すためにやってること。もしそれが認められなかったとしても、それは単に成果につながるものじゃなかった、というだけです。
 んで、認められなかったからといって、そこでグチを言っても、な~んの意味もありません。グチを言っても、それは自分が負のサイクルに入っちゃうだけ。

 だからこそ「じゃあ、どうする?」を考えましょう。
 がんばることが目的じゃないんです。適切な成果を出すことが目的なんです。そのために必要なのは、「考えること」と「動くこと」だけです。

 どっちかだけじゃダメです。
 ちゃんと考えて、ちゃんと動く。

 社会人になると、「ぼうけんの書」を止めちゃう人も多いけれど、実はアレ、むしろ社会人になってからのほうが役立ちます。

 「なんで?」「ホントに?」「たとえば?」「だから?」

 社会はこの問いかけの連続です。どんなライフハックやテクニックよりも、よっぽどシンプルで使えるツールだと、ぼくは思っています。
 ぜひ、社会人になっても「ぼうけんの書」を忘れずに。


 以上が、ぼくからの新社会人へのメッセージ。
 1/「キャラ」を忘れないでね。
 2/みんなの評価者は「顧客」だよ。
 3/成果を出して、ナンボやで。


 忘れそうになったら、この言葉だけ覚えておいてください。

 「楽しく、気持ち良く、適当に」

 これ、ぼくの20年来の座右の銘です。

 まずは自分が楽しむこと。
 楽しめそうにないものにも、楽しさを見つけ出すこと。
 それでいて、まわりの人も気持ち良い状態であること。
 「がんばる」んじゃなくて、適当な手段を選ぶこと、考えること。

 つまり、「キャラ」と「クレジット」と「ぼうけんの書」です。

 みんなが素敵な社会人になることを願っています。
 新社会人、おめでとうございます。

 ぜひ、社会人としても楽しんで!!