旧式就活法の大人たちがよく言う、「具体的に」というアドバイス。

 具体的に書こう。
 具体的に話そう。
 具体的な事例を盛り込もう。

 彼らはいつも「具体的に」って言うんだけど、そのアドバイスがそのもの「具体的」じゃない。 「具体的」って何? どうすれば「具体的」に書けるの? 「具体的」にする方法を、「具体的」に教えてよ、って思っちゃうくらいに「具体的」なアドバイスがもらえない。

 「事例を盛り込もう」なんて、そりゃ特定のエピソードについて書いてるんだから、事例じゃないはずがない。「“ゼミをがんばった”とだけ書くよりも、“ゼミを活性化するために積極的に動きました”と書きましょう」って、何が変わったの?ってくらいに具体的じゃない。
 かろうじて具体的なのでさえ、「数字を使おう」とか言ってて、もう…。
 いや、もちろん数字で表せるものは使えばいいんです。そのほうが、そりゃわかりやすくはなります。数字はどんどん使えばいい。ただ問題なのは、自己PRというものは、ぼくらの「がんばり方」を伝えることが目的。それって、必ずしも数字に換算できるものじゃない。

 自己PRに限らず、文章や言葉が具体的じゃなくなる理由はいろいろあります。けれど、大きな理由のひとつが、「それっぽい言葉」でまとめようとしちゃうから。

 たとえば、「リーダーシップ、協調性、積極的に、誠意を持って、試行錯誤、必死になって、膨大な量、意見の調整、暗中模索、協力して、多様な価値観、前向きに、環境づくり、粘り強く、がんばる、成長―――」

 どれも何かを言っているようで、何にも伝わってこない。その言葉を聞いても、何をしているのかがわからない。何となくそれっぽいんだけれど、じゃあ具体的に何をどうしたのかと言ったら、人によって理解の仕方が変わっちゃう言葉。
 そんな「それっぽい言葉」が、学生の自己PRをわかりにくくしちゃってる。

 じゃあ、どうするか?

 そこで、13奥義の3番目と4番目。
 「映像化」と「3秒ルール」です。

 まずは、「映像化」について説明していきましょう。


 たとえば、ぼくらの日常に溢れる四字熟語。
 一石二鳥や竜頭蛇尾、自縄自縛とか単刀直入、右往左往に雲散霧消、酒池肉林。

 これらの四字熟語って、どれも「風景」が思い浮かぶ気がしませんか?

 一石二鳥なら、二羽の鳥に石を投げている風景。竜頭蛇尾なら、アタマが竜でしっぽが蛇の動物。自縄自縛はちょっとSMっぽい感じがするし、酒池肉林なんてどう考えたってパラダイスです。日本酒かなぁ、焼酎かなぁ、でもやっぱりワインだよな、とか考えちゃう。

 一方で、因果応報や唯々諾々、一蓮托生とか二律背反、諸行無常に不撓不屈、手練手管。
どうでしょう……。
 一石二鳥や単刀直入などの言葉と比べると、どうにも映像が浮かばない。因果応報のイメージ、唯々諾々のイメージ、不撓不屈のイメージ。その言葉が「言っている意味」はわかるけれど、そこに情景が浮かばない。そもそも「不撓」ってなんやねん、って。


 そして何より、記憶に残る度合いが違う。
 どっちのグループの言葉のほうが覚えてる数が多いですか?

 どっちのグループも、7つの四字熟語を並べてあります。そのうち、覚えている数が多いのはどっちでしょう。たぶん、前者のグループのほうが、覚えている数が多いと思うんです。
 四字熟語だから、文字数だって全部同じです。それなのに、後者のグループよりも、前者のグループの言葉のほうが覚えやすい。

 日常生活でも耳にする、「東京ドーム3杯分のビールが消費されました」とか「積み上げたら富士山と同じ高さ」とか「クラスに3人の確率」という言葉だってそう。

 さらに、自分の好きな小説のいちばん好きなシーンを思い出してみてください。
 東野圭吾でも伊坂幸太郎でも百田尚樹でもいいです。ドストエフスキーでもヘッセでもサルトルでもいいです。自分の好きな小説のいちばん好きなシーン。ちょっと思い出してみてください。

 自分の好きな小説の、いちばん好きなシーン。


 さて。

 それって、「言葉」で覚えてます?

 いま、頭の中では、たぶん「映像」としてシーンを思い浮かべたと思うんです。
 自分の好きな小説で、いちばん好きなシーン。それですら「文字」では思い出さない。
 小説って、全部が文字で書かれた情報です。それなのに、思い出そうとすると、文字はちゃんと思い出せないのに、映像は思い出せる。

 ここまでに何度も書いてきた「キャラ」の話だって、同じです。
 「魔法使い」って言えば、コツコツ地道に研究している魔法使いが思い浮かぶ。たぶん杖とか持ってる。
 「戦士」と言えば、勝ち気で強そうで、筋骨隆々の戦士が頭の中に描かれる。もちろん鎧に剣か斧を持っている。
 料理の話で喩えたのも、旅の話で喩えたのも同じです。
 すべては、頭の中に「絵を描く」ため。

 つまり、「映像」には、人の記憶に焼きつく力がある。
 イメージすることで、記憶に残りやすくなるんです。

 映像になると、そこに何かしらのストーリー(物語)が生まれやすくなります。
 ストーリーになると、文字だけでは伝えきれない想いや感情が、勝手に付加されやすくなる。さっきの四字熟語だって、前者のグループには文字情報以外の豊かさがある気がしませんか。

 だからこそ、自己PRだって、その仕組みを使わない手はありません。
 同じ文字数、同じ時間で、できるだけ多くのことを伝えたいなら、情報を「映像化」すること。映像化することで、情報はより具体的になります。
 どんなに「積極的!」とか「主体的!」と言ったって、「積極的な人」のイメージって描けない。もし映像化できたとしても、その映像は人によって違ってくる。

 だからこそぼくらも、自己PRには映像化できる言葉を盛り込んでいきたい。情景がイメージできる言葉を盛り込むことで、面接官の記憶に残りやすい自己PRになる。
 いままで、「主体的」とか「試行錯誤」と書こうとしていた言葉を、映像に変えてみましょう。そうすることで、自己PRは一気に「具体的」になる。

 これが、『就活ゲーム必殺自己PR作成のための13奥義』その参。

 ★イメージを想起させるために言葉を「映像化」すべし。

 これを使って、より企業の人たちの記憶に残る自己PRを作りましょう。