一人の男性が居たとします。
 生まれてこのかた彼女ができたこともなく、ず~っと独りで暮らしてる。部屋でパソコンをいじりながら、女優やアイドルの動画を見て、写真集を眺めては「彼女、ほしいなぁ」とか言ってる。
 もちろん彼には女性経験もなくて、女性との会話だって数えるほどしか機会がない。そんな彼は言うんです。「やっぱり結婚を考えると、本当に自分が大切にしたい人と付き合いたいし、自分を大切にしてくれる人と付き合いたい」って。
 「新垣結衣とか北川景子みたいな人がいいなぁ」なんて言いながら、「どんな人が自分に合うのか分かんなくてさ」とか「おれのこと、好きになってくれる人ってどんな人かなぁ。せっかく結婚するならお互いに合う人がいいけど、それってどんな女性かなぁ」とか言って、ず~っとパソコン見てる。

 いや、あくまでも「たとえば」の話ですよ。
 仮に、そんな男性があなたの友人に居たとしたら、どう思います? なんて言ってあげるでしょう?

 ぼくだったら、「とりあえず家、出ろや!」です。

 「世の中にどんな女性がいるかもわからないくせに、ぐちぐち悩んでんじゃね~ですよ」です。女性と話したこともなく、女性の素晴らしさを大してわかってないくせに、それで意中の人と付き合えると思ってんじゃね~ですよ、と。

 で、お察しのとおり、就活だって同じだよ、ってことです。

 まだ就活も始まってない段階で、「こんな会社がいい」とか「あの会社じゃなきゃイヤだ」とか、そういうことを考えたって仕方がないんです。「どんな会社がいいのかな」とか「自分のヤリタイコトができる会社ってどこかな」とか、ゆ~ても絶対に入社できる確証なんてあるわけないんです。

 ほとんどの学生は、しょせん仕事童貞です。

 女性に喜んでもらうにはどうすればいいか、どんな女性がどんなことを求めているか、世の中にはどんな女性がいるのかすら知らない。
 仕事で活躍するにはどうしたらいいか、どんな会社ではどんな働き方をしているのか、世の中にはどんなしごとがあるのかすら知らない。

 なのに、ど~でもいい情報にばっかり振り回されて、不安になって外に出ようとしない。出たら出たで、人に言われるがままの受け身で対応。
 世の中にはいろんな女性がいて、すべての女性に魅力的な部分があるのに、直接触れ合おうともしない。わざわざ合コンなんかに行かなくたって、女性との出会いなんて、作ろうと思えばいくらでも作れる。
 世の中にはどこにでも社会人はいて、すべての仕事に必ず魅力的な部分があるのに、触れ合おうともしない。わざわざ合説なんかに行かなくたって、社会人との会話なんて、しようと思えばいくらでもできる。

 いろんな女性と出会って話をする中で、その人の魅力に気づいたり、自分の魅力に気づいたりする。魅力のない女性なんて、まず居ない。
 いろんな社会人と出会って話をする中で、その仕事の魅力に気づいたり、自分の魅力に気づいたりする。まったく魅力のない仕事なんて、まぁありません。

 女性と話すことなく、「意中の人」が見つかるなんてことがないように、社会を知らずに、「自分らしく働ける仕事」が見つかることなんてありません。
 そもそも、まだ付き合えるかどうかもわからないうちから、どんな相手を選ぼうかなんて、悩みどころが間違ってる。相手を「選べる」ようになるには、2つしか方法はないんです。
 ひとつは、自分のどんな部分が、どんな相手に求められるかをちゃんと知っている場合。もうひとつは、すでに一人の相手から求められている場合。

 どちらの条件も満たしていないなら、とりあえず動くしかありません。
 たぶん学生のみなさんが思っているよりもずっと、世の中の仕事のほとんどには、必ず何かしらの「楽しさ」があります。
 ひとりで部屋にこもってパソコンを眺めているだけだと、限られた情報、飾られた情報に踊らされちゃう。自分がどこに立っているのかも見えなくなっちゃう。
 もちろん夢を持ったり、目標を持つのは大事なことです。
 でも、いきなり大きなことを考えすぎると、目測を誤ることが多い。実情とはズレた夢や目標になっちゃうことが多い。自分の可能性を狭めちゃうことだって、たくさんあります。

 旧式の就活法でよく言われる、「業界を絞る」なんて、必要ありません。そんなもったいないこと、しなくていい。
 社会人と話して、少しずつ社会を知って、視界を狭めることなく、自分の評価されやすい部分を知る。その過程の中で、活躍できる場所の条件は見えてくるようになります。
 志望業界だとか志望企業なんて考えて悩む前に、「とりあえず家、出ろや!」なんです。自分の思い込みや、安心できる場所から踏み出すこと。そうしなきゃ、志望企業なんて見つからず、いつまでも仕事童貞のままですよん。