ト書き的「ぼうけんの書」活用法。
 実はすごくシンプルです。

 端的に言えば、ひとつのエピソードを全部「ト書き」にして、それぞれを展開していく。たったそれだけのことです。でも、これが絶対的に効果的。

 もうちょっと具体的に説明していきましょう。
 まずは「ぼうけんの書」を贅沢に使う気持ちになりましょう。
 最初の段階で、ちまちま書いちゃダメ。この最初の作業は、できるだけスペースに余裕をもって書いていくことが大事です。特に魔法使いや戦士の人は、スペースを埋めようとしちゃう傾向があるので、気をつけてくださいね。

 今の時期だったら、だいたい「自己PRではコレを書こう」というネタがあると思います。すでにそのエピソードで、いくつかのエントリーシートを出しているかもしれません。
 そのエピソードについて、思い出せる事実を全部「ト書き」的に書いていく
 そのときの行動、状況、自分がやったこと、まわりの人がやっていたこと、自分が感じたことでもいいです。

 たとえば、「友だちの相談に乗った」というエピソードだけでも、ト書き的に書くと2ページくらいの情報量になります。

 学食でご飯を食べていた→友だちのアケミと話していた→突然アケミが泣き出した→まわりの学生たちから見られた→バッグからハンカチ取り出した→足りないからトイレからトイレットペーパーを持ってきた→→5分くらい戸惑っていた→でも泣き止まない→10分ぐらいしてやっと落ち着いてきた→アケミ話し始めた→バイトの話→店長からイジメられたらしい→自分も苛立ってきた→バイト仲間の話も聞いた→以下略。

 ほら、友だちの相談に乗るだけでも、これだけの情報がある。
 しかも、まだ相談が始まったばっかりです。

 大事なポイントは、多くの人はこれを「友だちの相談に親身になって乗った」で済ませちゃったりするということ。
 でも実際には、トイレットペーパーを取りにまで走って、まわりの目を気にせずに友だちの側にいて、話し始めるまでの10分間も一緒にいてあげてるような人なんです。
 世の中には、「親身に友だちの相談に乗る人」はたくさんいるだろうけれど、泣いてる友だちのためにトイレットペーパーを取りに走る人はそんなにいません、たぶん。

 で、こういうト書き的文章を、ずら~っと書いていく。
 この作業をしている段階は「考え」なくていい。「思い出す」だけです。
 思い出しながら、そのときに何があったか、誰がどう動いたか、自分が
 後からまだ書くことがあるので、2行か3行は空けながら書いていく

 これは、まずは事実をちゃんと洗い出す作業です。

 たぶん『絶対内定』を始めとする就活本の影響が大きんじゃないかと思うんだけれど、就活病の症状の1つとして「考え方」に寄りすぎちゃうという部分がある気がします。
 学生から「ぼうけんの書」を見せてもらうときも、考え方はたくさん出てくるのに事実が少ないというケースがあるんです。

 それこそ「私の強み」だって、「自分らしさ」だって、「大切にしているもの」だって、一般的な就活本では考え方に寄りすぎる。
 そういうことを考えたり、気づいたりするのはもちろん大事なことです。
 ただ、「考え方」って、自分じゃなくても言えちゃう
 45万人が同時に動いている就活という状況においては、そこが問題になってきちゃう。たとえば「世界は平和であるべきだと強く思っている」とか「男性は女性に優しくしないといけない」とか、「仕事ではお客さまのことを考えながら、商品の魅力がちゃんと伝わるように話そうと思っている」とか、「人の笑顔を大切にする」も、全部そう。

 そういうことって、本当に思ってなくても言えちゃう。
 同じような「考え方」をしている学生は、10万人は居ると思ってください。

 だからこそ、まずは事実をしっかり洗い出す。
 おもちゃ箱をひっくり返す。
 整理をしたり、捨てるものを決めたり、どれを使うかを決めたりするのは、それからです。まずは事実を思い出す。そのためにト書きで書く
 そうするだけで、そこには、自分だけの話が出てきます。世の中に45万人の就活生がいたとしても、まったく同じ経験が書かれているなんて、絶対にありません

 自分だけのエピソードを創るための「ト書き的」ぼうけんの書の活用法。
 最初にやるのは、事実を羅列すること。ぜひぜひまずはやってみてください。

 次回に続きます。