「先輩社員が良い人ばかりだったので!」
 「尊敬できる社員の方が多いので!」
 「人事の方と気兼ねなく話ができたので!」

 学生が「その企業を気に入った理由」について話すとき、もしくは志望動機を話すときなんかにも、こう返答されることがある。そういうのは、確かにわかる。ビジネスの現場でバリバリ働いている先輩社員たちをみて、「わ~かっこいい!」とか「俺も将来はあんな風に!」と思うのはわかるんです。

 でもね、それって「キャバクラ嬢に恋したおっさん」と同じ状態ですよ。

 あなたの知り合いの男性が、初めてキャバクラに行ったとしましょう。そこで君の友だちはお店の女性にちやほやされて、自分の話したいことを好き勝手に話しても常に「わ~すごい♪」なんて言ってくれる、ちょっと変なことを言っても「たしかに~!」「わかるぅ♪」って同意してくれる。
 それで「俺、アキナちゃんが大好きだ!」とか「ユキコは俺のことを好きに違いない!」と言っているその友だちをみて、あなたはどう思いますか?

 「いやいや、彼女らも商売でやってるだけやし…」

 ですよね。学生が説明会や社員面談で「すごく良い人だった!」って思うのも、だいたいそれと変わらない。企業の人事も先輩社員も、彼らは「あくまでも仕事」でやってるんですよ。
 プロの人事は、言ってみれば「いかに自社が良い会社であるかを伝える営業マン」です。当然、その人事に選ばれた先輩社員だって同じです。

 「そんなのはイケてる学生に対してだけでしょ?」と思いますか。
 それは違います。もちろん優秀な学生に対して、「他社よりもウチの方が良い会社だよ」と言うのは当たり前。でも、説明会や選考前半の「どの学生が優秀かがわからない」時点でも、「誰が優秀かわからない」からこそ「営業」するんです。

 もっと言えば、自社の選考では落としたとしても、その学生が将来的に取引先に入社しないとは限らない。消費財メーカーやBtoCサービスの会社だったら「入社しない学生たち」は現時点ですでに、れっきとした「お客さま」なんです。そんな学生たちに嫌われるのはリスクしか生まない。

 だから、キャバクラ嬢に恋をしちゃいけないのと同じように、人事や先輩社員に恋しちゃいけないんです。

 「でも、社員を見るのは大事だと思う!」という意見もあります。
 そうです。その意見は十分に正しいし、間違ってない。ダメなのは「相性で考えること」なんです。「相性」に寄りすぎさえしなければ、先輩社員は大事な情報リソースです。

 自分との「相性」は、相手の出方、状況、見えてる側面によっていくらでも感じ方は変わる。そして、これらの要素は、選考の中で「相手が意図的に見せようとしている側面」でしかない。だから相性なんかで判断しちゃダメなんです。

 人を見るときのポイントは大きく2つ。「スキル」と「考え方」です。
 自分が「カッコイイ!」と思ったのならそれでもいい。その「カッコイイ!」とか「素敵!」「あんな社員になりたい!」と思った部分が何なのか。まずは、それを言語化すること

 そして第一段階としては、その言語化された「カッコイイ!」要素が、「スキル」か「考え方」に関するものかどうか。そうでなければ意味がありません。「何となく感覚が近い」とか「私の良いところを引き出してくれた」という状態ではダメです。

 で、第二段階として、「それはその会社で働く社員の大部分に共通することなのか」。さっき書いたとおり、企業が新卒採用に登場させる社員は、基本的にその会社の「エース級社員」です。(たまに何も考えずに社員を選ぶ会社も、あることはあります)。

 そんなエース級社員のスキルだけを見て、「ああなりたい!」「あの先輩の下で働きたい!」と思っても、実際にそのエース級社員の下で働ける可能性は高くない。「あの先輩に憧れて!」入社したのに、1年後に入社してみたら既に他社に引き抜かれたとか、転職していた、なんてことはよくある話。僕のまわりだけでも両手に余るくらい聞いています。

 だからこそ、その先輩社員から感じた「スキル」や「考え方」が、全社的なものかどうか、が大事なんです。1個人の属性ではなくて、全社員が持っている(もしくは持つことが目標とされている)要素に対して眼を向けること

 そうしたことを考えた上で、目の前の人事や先輩社員にそれを感じ、そこに自分の将来が合致するのであれば、「社員に共感して」も大丈夫。逆に、自分が社員のどこに惚れたのかがわからないと、ただの「キャバ嬢に惚れた」状態になっちゃいますよ。そしてご存知のとおり「恋は盲目」です。


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