もうね、しばらくブログをお休みしていたから、書きたいネタがてんこもり。
70本くらい書きたいネタが積み上がっているのだけれど、でも「よし書くぞ!」なんてパソコンに向かったら、「あれれ……」とかいって上手に書けなかったりもするんですど~せ。ま、それはそれでおっけーとして、いろんなことを発信していけたらな、と思っております。

んで。

今日は本のご紹介。
ここ数年のぼくの「なにこれすごい!」という本はどちらかというとビジネス系とかマーケティング系とかが多かったのだけれど(『アイデアのちから』とか『アテンション』とか『スヌープ!』とか)、今回はちょっと毛色の違う本。

それが、これ。

とっても面白かったっす。
本書の内容そのものも面白いのだけれど、それこそ『アイデアのちから』や『ATTENTION』と同じで、(そして良書の特徴でもあるのだけれど)、読んだ後に自分で考えられるヒントが盛りだくさん。

自動車に喩えると、エンジンハンドリングの話をしているのが、就活ゲーム。
んで、それとは別にガソリンタンクの話をしてくれているのが、この本。

ぼくはこれまで就活というカテゴリーを通して、人の個性はどう分類されて、どうやって発揮できるのか。それを発揮するための方法論と、そのパターンなんかについて考えてきました。つまり、「人の活躍する方法」を考えて、それを最大化する方法に主眼を置いていたわけです。
自動車で言うところの、エンジン出力量の上げ方と、それを活かすためのハンドリングの仕方。それがわかれば、自分の得意なコースもわかるし、より最大出力で走ることができるよね、と。
それはそれで、ある一定の理論ができたと思っています。

ただ、この本で気づかせてもらったのは、「最大出力だろうがなんだろうが、“走れる”のはガソリンがちゃんと補充されてるからだよね?」という視点。

どんなに性能が高くて、どんなにドライバーが優秀で、どんなに得意なコースがわかっていても、ガソリンが切れたら走れない。

著者は、自衛隊のメンタルヘルスの教官。
それこそ自衛隊や軍隊って、戦闘力や戦略も大事なのだけれど、それ以上に重要なのが「継続的に力を発揮し続けられるか」であって、「できない状態にならないような対策を、普段から施しておくこと」が重要なわけです。
アメリカのベトナム戦争然り、第2次世界大戦の日本軍然り、そして戦闘ではないものの数年前の東日本大震災での自衛隊の方々のがんばり方もそうで、どんなに強大な戦力をもっていても、常に万全な状態じゃないと、部隊としての機能を果たせない。瞬間最大風速じゃだめなんです。
そしてもちろん、個人だってそれは同じことで、人は常にいつでも最大限の能力を発揮できるわけじゃないし、むしろ最大限を発揮し続けることそのものが人を疲弊させちゃう要因でもある……。

自動車が走る以上、その性能がどうであれ、ドライバーが誰であれ、ちゃんとエネルギー源が補充され続けているから、それらを活かせる。どんなスーパーカーでもガソリンがなくなったら、ただの鉄の塊でしかありません。
そんな『就活ゲーム』に足りなかった、ガソリンタンクの視点が書かれているのがこの本。

この視点はまさに、目からウロコでした。
人や組織が、ちゃんと健全に出力をし続けられるように、メンタルを適切に維持するための「ムリ・ムダ・ムラ」をコントロールする方法論。


もう「はじめに」の段階で、素晴らしい。
心のエネルギーを最も低下させる感情のムダ遣いのメカニズム

って、ホントそうなんですよね。
人は何に疲弊するかというと、肉体的なところがわかりやすいけれど、それと同じように感情を刺激されることで疲れちゃう、と。それは「しんどい」ときはもちろんそうだし、「怒り」でも疲れるし、「嬉しい」ときにだって、ポジティブな感情であっても疲れちゃう。そうした「感情疲労」という視点。

そして、そんな「感情のムダ」は「雪だるま式に拡大していく」と言います。
最初は、「感情によって視点が変わり、その視点によってまたムダな感情が発動する」
その上で、感情疲労が蓄積して、「疲労によってさらに感情が過敏になる」と。
そしてさらには「周囲の人を巻き込んでの感情のエスカレーション」が起きる。
最後には、そうやって生まれてくる「感情を処理するための対処法が、逆にどんどん状況を悪化させていく」という構造で、感情のムダ遣いが雪だるま式に拡大していくよね、と。


そうやって感情を刺激されることの多い今の世の中に、どうやって対処していくか、というのを自衛隊の経験を元に、やさしく丁寧に書いてあるんです。

他にも、ダメージコントロール、「ムリ」することで起きる3段階の変化、ストレス見積もり表、7~3バランス目標設定法、2段階目標設定などなど、本当に勉強になることばかり。「仕事としての休息」の話なんかは、マンガの『エリア88』や『マスター・キートン』でも書かれていたけれど、本当にこれってむしろ現代社会でも、まさに同じことだと思うわけです。


この本を読みながら、以前に書いた「水槽モデル」のことを思い出しました。
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水槽に流れ込む水の量と、排出する量のバランス。
その方法論として、ぼくがあんまり専門的に書くことのなかった「流入量の減らし方」と「水槽のキャパの捉え方」について、しっかり1冊使って書かれているのが、この本だな、と。
それこそガソリンタンクの適切量を維持するための方法論。

マネジメントをする人にとっても、仕事をがんばっている人にとっても、「ストレス」との向き合い方や処理・解消の仕方について気付かされることの多い良書。
就活ゲームの進化を考える上でも、猿基地での相談や学生とのかかわりかたを考える上でも、たくさんのヒントをもらった本でした。仕事でどうにも疲れてしまう人、部下や同僚の扱い方に悩んでいる人、ぜひぜひ読んでみてくださ~い。